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「また今夜も目が覚めてしまった」
時計を見ると午前3時。再び眠ろうとしても、考え事が頭を駆け巡り、気づけば1時間以上が経過している。そんな経験をお持ちの方は決して少なくありません。
実は、20歳以上の日本人の約15%が夜中に目が覚める「中途覚醒」の悩みを抱えています。特に、仕事や家庭でストレスを感じやすい20代後半から50代の世代では、この症状がより顕著に現れる傾向があります。
中途覚醒が起きる本当の理由
夜中に目が覚めてしまうのは、単なる睡眠不足だけが原因ではありません。東洋医学には「不通即痛」という言葉があり、体内の流れが滞ると痛みや不調が現れると考えられています。
現代医学の観点から見ると、中途覚醒の主な原因は以下の通りです。
ストレスによる自律神経の乱れが最も一般的な要因です。仕事のプレッシャーや人間関係の悩みは、睡眠中も脳を興奮状態に保ち、深い眠りを妨げます。コルチゾールというストレスホルモンが過剰に分泌されると、睡眠の質が著しく低下するのです。
加齢による変化も見逃せません。40代後半以降では10年ごとに中途覚醒時間が約10分長くなり、最も深い睡眠段階であるノンレム睡眠N3の時間が約2%ずつ減少していくことが研究で明らかになっています。
その他、生活習慣も大きく影響します。就寝前のアルコール摂取は一時的に眠気を誘いますが、睡眠の後半で覚醒を引き起こします。カフェインの過剰摂取、運動不足、寝室の温度や湿度の問題なども、中途覚醒の原因となります。
体の「めぐり」を整える重要性
睡眠の質を左右するのは、体内の血液、リンパ、体液、そして「気」の流れです。これらが滞ると、体のあちこちに不快感がたまり、不眠や倦怠感を引き起こします。
運動不足や悪い姿勢、ストレス、冷えなどによって、日々の小さな習慣の積み重ねが体内に老廃物を蓄積させます。その結果、コリや痛み、不眠、疲労感、気力低下を招くのです。
特に秋冬は体が冷えやすく、経絡の流れが滞りやすくなるため、老廃物をためこみやすい季節です。結果として、眠りの質も悪化しやすくなります。
朝まで眠れる1つの習慣
では、どうすれば朝まで熟睡できるのでしょうか。
答えは、就寝前に「手のツボを刺激する習慣」を取り入れることです。
手や腕には多くの経絡やツボが集まっており、これらを刺激するだけで全身のめぐりが改善します。特に重要なのは以下のツボです。
内関のツボは、手首から指3本分ほど離れた場所にある、腱と腱の間のくぼみに位置します。このツボは心包経という経絡上にあり、心を落ち着かせる効果があります。深呼吸をしながら、反対側の親指でゆっくりと10秒ほど押し続けます。指圧されている側の手を軽くゆすると、刺激が深まります。
次に、手の中指をゆっくりと反らします。これにより手のひらの中央を通る経絡が刺激され、体全体のめぐりが促進されます。
さらに、全ての指の爪の付け根の脇にある井穴というツボを刺激します。親指から順に、肺経、大腸経、心包経、三焦経、そして小指には心経と小腸経が通っています。右手の親指の腹と人差し指の骨で左手の各指の井穴をはさむように10秒ずつ刺激します。
これらを左右両方の手で行います。硬く感じる側は少し長めに行うとよいでしょう。
睡眠の質を上げるための補完的な方法
ツボ刺激に加えて、以下の習慣を取り入れるとさらに効果的です。
就寝3時間前までに夕食を済ませることで、消化活動が落ち着き、体が睡眠に向けて適切に準備できます。特に高脂肪や高タンパク質の食事は消化に時間がかかるため注意が必要です。
寝室の環境を整えることも重要です。室温は春秋で18〜22度、夏は26度以下、冬は15〜18度、湿度は50〜60%が理想的です。遮光カーテンを使って完全な暗闇を作ることで、メラトニンの分泌が促進され、深い眠りにつながります。
就寝の30分から1時間前にぬるめのお湯でゆっくり入浴することで、副交感神経が優位になり、心身の緊張がほぐれます。入浴後、体温が下がるタイミングで自然な眠気が訪れます。
適度な運動も効果的ですが、就寝直前の激しい運動は逆効果です。日中か就寝2〜3時間前までに、ウォーキングやヨガなどの軽い運動を行いましょう。
焦らず継続することの大切さ
睡眠の質を改善するためには、一つの方法を急に取り入れるのではなく、できることから少しずつ始めることが大切です。
手のツボ刺激は、ベッドに入ってからでも簡単に行えます。1日5分程度で済むため、忙しい方でも続けやすいでしょう。
ただし、中途覚醒が週に3回以上起こり、それが数週間以上続く場合や、日中の生活に支障をきたす場合は、睡眠時無呼吸症候群やむずむず脚症候群などの病気が隠れている可能性があります。その場合は、早めに医療機関に相談することをおすすめします。
質の良い睡眠がもたらすもの
朝まで熟睡できるようになると、人生が変わります。
目覚めのだるさが軽減され、日中の集中力や判断力が向上します。仕事のパフォーマンスが上がり、ストレスへの耐性も高まるでしょう。
免疫力が向上し、風邪や感染症にかかりにくくなります。ホルモンバランスが整い、食欲の管理もしやすくなるため、健康的な体重維持にもつながります。
何より、毎朝すっきりと目覚められることは、一日を前向きに始める大きな力となります。
今夜から、寝る前の5分間を自分の体と向き合う時間にしてみませんか。手のツボを優しく刺激しながら、深呼吸をして心を落ち着かせる。
そのシンプルな習慣が、あなたに朝まで熟睡できる夜をもたらすかもしれません。
