会社を退職した後、次の仕事が見つかるまでの生活を支える制度のひとつが、雇用保険の「基本手当(いわゆる失業手当)」です。
特に自己都合での退職の場合、一定期間は給付が受けられない「給付制限期間」が設けられているため、制度の仕組みを理解しておくことは大切です。
今回は、2025年4月から短縮された給付制限期間の内容と、教育訓練を通じて制限が解除される仕組み、そして必要な手続きについて解説します。
給付制限って何? どのくらい待たないといけないの?
雇用保険の基本手当を受けるには、まず「受給資格決定」が必要です。
そして、受給資格が決定した日から7日間は、すべての人に共通する「待期期間」があります。
その上で、自己都合退職など正当な理由がない場合には、基本手当がすぐには支給されず、「給付制限期間」が設けられます。
2025年4月から、さらに短縮!
退職日 |
給付制限期間 |
~2020年9月30日 |
3ヶ月 |
2020年10月1日~2025年3月31日 |
2ヶ月 |
2025年4月1日以降 |
1ヶ月 |
つまり、2025年4月以降に自己都合で退職した方については、給付制限は原則1ヶ月となりました。
例外もあるので注意!
ただし、次のようなケースでは給付制限が3ヶ月となります:
- 過去5年間に2回以上、正当な理由なく自己都合で退職し、失業手当の受給をしたことがある場合
- 懲戒解雇など、自己の重大な過失による退職(いわゆる「重責解雇」)の場合
教育訓練を受ければ、給付制限がなくなる?
2025年4月からは、「学び直し(リ・スキリング)」を支援する新たな仕組みとして、一定の教育訓練を受けることで給付制限が解除される制度が始まりました。
対象となる訓練とは?
次のいずれかに該当するものが対象です:
- 教育訓練給付金の対象となる講座
- 公共職業訓練など、ハローワークが認める訓練
※訓練の開始日は2025年4月1日以降であることが条件です。
訓練を受けるタイミングによっても違いが
- 退職後に訓練を始めた場合:訓練開始日以降は給付制限が解除され、基本手当の支給が始まります。
- 退職前1年以内に訓練を受けていた場合:待期期間終了後からすぐに支給対象となります。
ただし、重責解雇で退職した場合は解除の対象外ですのでご注意ください。
給付制限を解除するには?手続きも忘れずに
訓練を受けるだけで自動的に給付制限が解除されるわけではありません。
ハローワークでの申出手続きが必要です。
手続きのポイント
以下のタイミングまでに、ハローワークの窓口で申し出ましょう:
- 訓練開始日が初回認定日より前の場合:
→ 訓練開始日の直後の「失業認定日に相当する日」までに申し出が必要。 - 訓練開始日が初回認定日以降かつ、給付制限満了前の場合:
→「給付制限期間満了後の失業認定日」までに申し出を。
必要な書類
申出の際には、次のいずれかを提出する必要があります:
- 訓練開始日が記載された領収書
- 訓練実施施設による証明書 など
雇用保険の基本手当は、原則として従業員が自分で手続きし、受給するものですが、退職予定の従業員から制度について質問されることもあります。
特に今回のような法改正があったタイミングでは、会社側も基本的な情報を把握しておくと、スムーズな対応ができます。
雇用保険の制度は随時見直されており、最新の情報を確認することが大切です。
ハローワークの窓口や公式サイトなどで、常に最新の情報をチェックするよう心がけましょう。