2022年4月にパワーハラスメント防止に関する法改正が施行されましたが、実際にはまだ対策が十分に進んでいない企業も多いのではないかと肌で感じております。
特に中小企業の方々にお話を伺うと、いまだ取り組んでいないという声が少なくありません。
そこで今回は、法律が施行されてから3年が経過しましたが、改めてパワハラ対策について書いていきたいと思います。
まだ十分な対策が取られていない企業もある中で、今一度、社員が安心して働ける職場環境を作るために、どんな対策が必要なのかを見ていきましょう。
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パワーハラスメント(パワハラ)という言葉が広く知られるようになって久しいですが、実際に企業でしっかりと対策を取っているところは、まだそれほど多くないのが現状ではないでしょうか。
特に中小企業では、「うちの会社には関係ない」「今まで問題が起きたことがないから大丈夫」といった理由で、パワハラ対策を後回しにしていることが少なくありません。
しかし、実は法律施行を受けてパワハラ対策は今や企業にとって欠かせない義務となっています。
特に、2022年4月からは中小企業にも「パワハラ防止措置」が義務化され、これを怠ると、行政からの指導や企業としての責任が問われる可能性もあります。
なぜ、今あらためてパワハラ対策が重要なのか
最近では、被害者が社内の相談窓口だけでなく、SNSや口コミサイトを通じて声を上げることも増えており、企業の対応が社会的に注目されることが増えています。
また、加害者となった社員や管理職が「自分の言動がパワハラだとは思わなかった」と後から気づくことも多いのが現状です。
よくある誤解と見落とし
「パワハラ」という言葉を聞くと、多くの人がまず思い浮かべるのは、怒鳴ったり、机を叩いたり、威圧的な態度で相手を追い詰めるといった、非常に分かりやすい“極端な例”かもしれません。
しかし、実際には、もっと微妙で、一見すると指導やコミュニケーションの一環と受け取られかねないような言動も、パワハラに該当する可能性があります。
たとえば…
能力不足を理由に特定の社員だけを仕事から外す
業務に関係のない私的なことをしつこく尋ねる
ミスを公然と強く責める
必要以上に成果を否定し、貢献を認めない
これらはすべて、場合によってはパワハラと判断されることがあります。
ポイントとなるのは、「相手がどう感じたか」だけではなく、“平均的な労働者”の立場から見て、それが明らかに行き過ぎた行為であるかどうかという、客観的な視点です。
つまり、上司や管理職が「これは指導のつもりだった」「悪気はなかった」と思っていたとしても、それだけでハラスメントではないと主張することはできません。
受け手に精神的な苦痛を与え、職場環境を悪化させてしまうような言動は、意図の有無にかかわらずパワハラと認定されるリスクがあります。
パワハラ防止の第一歩は、「これは指導だから大丈夫」と自己判断するのではなく、常に冷静に客観的な視点で、自分の言動が行き過ぎていないかを振り返る姿勢を持つことです。
企業全体で、風通しの良い、誰もが安心して働ける職場環境づくりを目指すことが、何より大切です。
経営者・管理職が押さえておきたいリスク
パワハラを放置した場合、企業には以下のようなリスクが生じます。
• 労働局や労基署からの指導・調査
• 被害者側からの損害賠償請求(民事訴訟)
• ハラスメントに関する悪評がSNSや口コミで拡散
• 職場内の信頼関係の崩壊・離職の連鎖
• 採用における企業イメージの低下
「今は問題が起きていない」ことがリスクゼロを意味するわけではありません。
むしろ、『対策をしていないこと自体が“リスクの温床”』となる可能性があります。
対策は難しくない。小さな一歩から始められます
今は問題が起きていなくても、次のような取り組みを「仕組み」として整備しておくことが重要です。
✔ ハラスメント防止方針の明文化
「会社としてパワハラは認めない」という姿勢を明確に打ち出すことで、社員の安心感につながります。
✔ 管理職向け研修の実施
「どこまでが指導?どこからがパワハラ?」といった具体的なケースで学ぶことが、未然防止に役立ちます。
✔ 相談しやすい窓口の設置
相談者が安心して声を上げられる体制があれば、早期の対応と再発防止が可能になります。
✔ 外部専門家の活用
状況に応じて社労士などの第三者を交えることで、社内では対応しづらい問題にも冷静に対処できます。
最後に
パワハラ対策は、企業にとって“今すぐに取り組むべき課題”です。
「うちには関係ない」と思っていても、ある日突然、社員からの申告やトラブルが発生することもあります。
いざという時にあわてないためにも、日頃からの備えと予防がとても大切です。
「何から始めればいいか分からない」
「社内ルールを整備したいけど、自信がない」
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