遠隔医療もいいが、患者の身体をじかに診ないでデータだけでわかるのか・
医療制度の崩壊か?
米ゼネラル・エレクトリック(GE)のマイク・バーバー副社長((ヘルシーマジネーション担当)は、アサヒ・コム編集部の取材に応じ、日本の地方自治体と連携し、過疎地から都市部の医療機関に画像データを送る遠隔医療の実験を始める考えを明らかにした。高齢化が進む日本を「重要な市場」と位置づけ、在宅医療や遠隔地医療の充実により疾病の早期発見を支える態勢づくりに力を入れる方針だ。
――少子高齢化の進展が日本経済や社会に与える影響をどうみますか。
「日本の医療費の約半分は65歳以上が消費している。日本の高齢化は急ピッチで進むため、今後高齢者の比重は増え、医療費の負担は巨額の借金を抱える国家財政を圧迫するだろう」
――医療費負担を抑えるためには何が必要でしょうか。
「高齢化に伴って、がんや認知症、アルツハイマー病、リウマチなどにかかる人が増える。例えばリウマチは発症して10年以内に治療しないと身動きが自由にとれなくなってしまい、治療のコストがかさむだけでなく、場合によっては仕事を失い、間接的なコストも発生するおそれがある。体内の状態の変化を示すバイオマーカーを調べることで早期に症状を感知できれば、コストもそれほどかからずにすむ」
――日本市場の位置づけをどうみていますか。
「高齢化のペースが世界でもトップの日本で成功例が生まれれば、他の国にも生かせる。GEとしては高齢化をビジネスのチャンスにつなげていきたい」
――早期発見には在宅医療の充実が必要ですが、GEとしての取り組みは。
「早期発見に限らず、手術後の回復も、入院しているより在宅で治療を受けている方が早い。家にいる人の動きを遠隔地からモニターし、通常とは違う動きをした場合に医療機関に連絡が届く技術をGEは持っている。患者が家で医師の指示通りに薬をのんでいるのかもチェックできる」
――地方と都市との医療格差も指摘されています。
「医療専門家の多くは都市部に集中しているため、ITを駆使して都市部と過疎地を結ぶことが大切だ。GEはカナダで、オンタリオ州の都市部から500キロ以上離れた遠隔地を結び、患者の画像データを送る取り組みをしている。うまくいけば世界各地で広げていきたい。日本でもカナダのような試行ができないか、すでに複数の都道府県知事と話し合いをしている。自治体だけでなく、複数の病院やIT企業を含め、いろいろな形での連携が必要になってくる。日本企業との提携も考えていきたい」
――GEはヘルシーマジネーションの施策として2015年までに全世界で60億ドル(約5400億円)を投資する計画を打ち出しています。
「そのうち半分の約30億ドルはCTスキャンや超音波診断装置、IT関連製品などの技術革新を進めるために投じる。残りの30億ドルは医療機関への情報提供、健康に影響を与える水を浄化するシステム開発などに投資する計画だ。具体化のひとつとしてハンディタイプの小型超音波診断装置を開発し、2カ月前に米国で、欧州でも最近販売を始めた。日本でも数ヶ月の間に投入する計画だ。超音波診断装置は5年前はデスクトップのパソコンぐらいの大きさだったが、今はポケットに入るサイズまで小さくできた。GEのヘルスケア部門の売り上げは現在約160億ドル。全体の1割ほどだが、戦略的な投資を通じて、今後も成長していけると思う」