ちょっとドメスティックな話になりますが、FX業者はどこにどれだけのストップが入っているのか、契約者のポジションや
オーダーはすべて把握できます。たとえば複数の業者のチャートを比較して、特定の業者のチャートだけが他よりも長い
スパイクが出ている場合、ストップを狙ったプライス操作が行なわれていると判断できます。実際、そのような操作が個別に
行なえるプログラムは存在します。顧客にとって不利な状況を生み出すプログラムを採用するかどうかは業者次第です。

相対業者の場合、顧客のポジションはつねにカバーされているわけではありません。カバーされていない顧客の損失は
業者の利益とイコールの関係です。実際のインターバンク平均レートではストップラインまで達していないが、ストップラインの
上下一定範囲にプライスが到達した時点でスパイクを起こし、ストップを巻き込み、顧客の損失を自社の利益にすることは
容易に可能です。

インターバンクレートは1種類ではないので(常に複数のレートをすり合わせてレートを決めていく)誤差の範囲といえなくも
ありませんが、少なくとも個人投資家を相手にしたFX業者は、恣意的に誤差を生み出すことができます。フェアな取引とは
いえませんが、違法ではありません。

視点をもう少し広げてみます。

インターバンクでトレードされている為替ポジションには、為替先物のほかにオプションなどがあります。オプションは将来の
ある期日に通貨ペアを売り買いできる権利を売買するものです。オプショントレードのポジションは、オプション取引を提供
している業者または銀行がすべて把握していますから、特定のレートにあるコール(買う権利)・プット(売る権利)が期限日に
執行された場合、短期的なレートがどちらに動きやすくなるのかは容易に予測可能です。

トレードとはどのように変動するのか予測不可能な価値を取引するものですから、自分は安く買って相手に高く買わせる、
あるいは自分は高く売って相手にも安く売らせ、結果的にレートが下がることで自分は安く買い戻す、または自分は高く
買ってしまったため、相手にはさらに高く買わせる、安く買ってしまったため、相手にさらに安く売らせて買い戻すことで利益を
得るシステムです。108円20銭でドル円を買いポジションしたのなら、自分が利益を得るには誰かが108円21銭以上で
買わなければならない、という単純な理屈です。

ひとつだけ認識していただきたいのは、個人投資家が見ているFX業者のチャートは、必ずしもインターバンクレートを正確に
反映しているものではないという点です。また、相対業者とのポジションのやり取りは、必ずしもカバーされているわけではなく
(インターバンクには流れていない)、個人投資家のポジションが為替相場に影響を与えているのかどうか、本当のところは
まったく分からないということです。

108.10-20付近にトレーダーのストップまたは期限が近づいたプットオプションが存在しているにもかかわらず、なぜ直前に
買いが強まるのか。誰が買いを強めているのかを想像すれば、少しは為替先物の本当の仕組みが理解できるのではないかと
思います。

FX業者のチャートを見るしか方法がない個人投資家は、チャートのパターンによってしか、ストップやオプションの存在を
知ることはできません。なぜまったく同じレートでサポートやレジスタンスができるのか、なぜ3回目のサポート・レジスタンス
へのトライでレンジブレイクしやすいのか、ブレイク後のプライスが大きく動くのはなぜか、その辺をもう少し考えたほうがよい
かもしれません。

FX業者や銀行は万能ではありませんが、少なくとも個人投資家よりはかなり有利な立場にいます。こういった不利な状況に
関与したくないのであれば、インターバンクに取り次ぐだけのブローカーを使い、1ユニット単位(100万通貨)でトレードできる
だけの資金を用意すればよいだけです。

相対業者の信託保全やいわゆる素性がしっかりしていて潰れないことと、個人投資家がフェアな環境でトレードできることとは
まったく別の問題です。自分と業者がフェアな関係で取引するには、自分も相手の商売が成立するだけのコストを支払うのが
当たり前、という感じでしょうか。少し話が飛んでしまいましたが、ご参考まで