先日、フランスのASナンシーが新たにCity Football Group(CFG)に加入するというニュースがありました。
新監督には、我らが前監督エリク・モンバエルツが就任すると言われています。
 
ASナンシーの買収が成立した場合、CFGに所属する(男子)クラブは9つになるそうです。
思えば、マリノスがCFGに参加した2014年、CFGの傘下クラブはまだ4つでした(マリノスが4番目)。
その後も新加入チームのニュースが時々ありましたが、あまり関心を払ってきませんでした。
 
今はマリノスの話題があまりありませんので、改めてCFGについて少し勉強してみました。
CFGのことと、マリノス以外のCFG傘下のクラブ、いわば姉妹クラブについて、少し書いてみたいと思います。
日本のメディアでは語られることの少ないCFGですが、最近公開された利重さんと西脇さんのインタビューや英米豪のスポーツメディアの英文記事を参考にしました。
 

 
1.そもそもCFGとは?
 
2008年、マンチェスター・シティ(マンC)がアブダビの王族に買収されました。
その際、英国にCFG、アブダビにアブダビ・ユナイテッド・グループ(ADUG)という持ち株会社がそれぞれ作られました。石油王→ADUG→CFG→マンCという持ち株構造です。
厳密には、CFGにはADUG以外の資本も入っています(今は中国系ファンド12%、米国系ファンド10%)。
 
その後、2013年にアメリカMLSのニューヨーク・シティFCを創設したのを皮切りに、CFGはマンC以外にも傘下のクラブを増やし、今ではマリノスを含む8つのクラブに出資しています。
もっとも、マンCの株式は100%保有しつつ、マリノスは20%にとどまるなど、出資には濃淡があります。
 
 
2.CFGの目標は?
 
CFGは積極的に世界展開し、今では欧州、アジア、北米、南米、オセアニアに傘下クラブを持っています。
なぜ世界展開するかというと、近年、欧州のビッグクラブがこぞって世界中でマーケティングをしており、欧州での覇権争いに繋がるその資金獲得競争に乗り遅れないためです。
色んな国でスポンサーを得て、ファンを獲得し、グッズを売って、収益力を高めようとしているわけですね。
 
マンCは買収で強豪チームになってからまだ歴史が浅く、世界的な知名度ひいてはブランドとしての展開力という点では、ライバルのマンチェスター・ユナイテッドを含む欧州の伝統あるクラブに後れを取っていました。
そこで、単にマンCを世界に売り出すだけでなく、子会社や提携会社となるクラブを世界各地に持つことで、グループとしてのブランド展開を行うことにしたのです。
デロイトやKPMGといった、世界的な会計税理事務所と同じような戦略ですかね。
 
それで、傘下のクラブには、ブランド力のために、チーム名やチームカラーといった根幹の部分で、ある程度統一的な運営が求められますし、注目されるためには何よりもチームが強くなくてはなりません。
出資比率=口を出せる度合いにより異なるのでしょうが、傘下クラブには、CFGの方針、方法論、情報網などが共有され、それらを駆使しながら、サッカーとビジネスの持続的な強化を図ることが求められます。
 
 
3.姉妹クラブ
 
①マンチェスター・シティ(英国)
 
言わずと知れたマンCです。
自分は欧州サッカーにはやや疎いので、このチームのことは皆さんの方がよくご存知かもしれません。
昨年7月にはマリノスと横浜で対戦し、生のマンCがマリノスサポーターの脳裏に焼き付いたことと思います。
 
一応紹介しておくと、CFG以前はマンチェスター・ユナイテッドの陰に隠れた二番手クラブでしたが、CFG以降の12年間で、英国プレミアリーグ制覇4回、国内カップ戦7回優勝を誇る強豪になりました。
あとは名将グアルディオラの下で悲願の欧州CL優勝を、というところでしたが、フィナンシャル・フェアプレー(FFP)違反により、次の2大会は出場停止となってしまいました。

 

 

 

②ニューヨーク・シティFC(米国)
 
米国MLSがリーグ拡大のため新規クラブを募る流れの中、MLBニューヨーク・ヤンキースとの合弁会社として2013年に誕生しました。ゼロからのクラブ立ち上げというのは、CFGの中でここだけです。
このクラブが作られた目的は分かりやすく、巨大なスポーツ市場を誇るアメリカへの進出ということですね。
 
ニューヨークには既にニューヨーク・レッドブルというチームがあり、後発クラブということになります。
(※ただし、シティFCがニューヨーク市に本拠を置くのに対し、レッドブルは川向うのニュージャージー州。)

創設当初は、神戸に移籍する前のビジャ、イタリアの名手ピルロ、盛りを過ぎたランパードが在籍したり、マンCのコーチを務めていたヴィエイラが派遣されて監督に就任したり、ちょっと話題になりました。
右肩上がりに強化が進み、2019年には創設5年目でMLS東地区優勝を果たしました。
 
本拠地は、野球で有名なヤンキー・スタジアムです。
野球場にサッカーのピッチを押し込むので、スタンドの配置がいびつになります。
クラブ創設から間もない頃に、近くに住んでいたこともあり、何度か試合を観にいったことがあります。
ちょっと写真を貼っておきますね。


 
 
 

 


③メルボルン・シティFC(豪州)
 
豪州Aリーグには、現在9つの国内チームがありますが、メルボルンのみ同一都市に2つクラブがあります。
その内のメルボルン・ハーツと言われたチームが、2014年にCFGに買収され、シティFCに名前を変えました。
ここでも、買収の目的は、豪州ひいてはオセアニアのスポーツ市場への進出ということですね。
 
ここでも、シティFCは後発クラブです。
歴史も実績も、ライバルのメルボルン・ヴィクトリーの方が勝っています。
とはいえ、CFG以降はじわじわと順位を上げ、モンバエルツ監督に率いられた今季(2019-20)は暫定2位につけています。初のACL出場も見えてきて、近い将来、マリノスとのCFG対決が実現したら面白いですね。

 

 

 
④モンテビデオ・シティ・トルケ(ウルグアイ)
 
ウルグアイの首都にある、クラブ・アトレティコ・トルケという新興クラブを2017年に買収しました。
2008年の創設以来、2部リーグにどっぷりでしたが、買収後は一応強化が実りつつあるのか、1部と2部とを行ったり来たりしてます。
CFGは、このクラブを南米進出の橋頭保として、新しいモデルケースを作りたいと意気込んでいるようです。
 
このクラブ、今はモンテビデオのエスタディオ・センテナリオというスタジアムを本拠地にしています。
日本語で100周年記念競技場という意味で、ウルグアイ憲法の100周年を記念して1930年に開場しました。
この年、第1回ワールドカップがウルグアイで開催され、このスタジアムが決勝戦の会場となりました。
ワールドカップの決勝戦の会場を本拠地とする、という点でマリノスと共通しますね。
 
実は一度行ったことがありますので、少し写真を載せておきます。
試合を観たのではなく、市内観光の一部としてでした。
 
 
 

 

 


⑤ジローナFC(スペイン)
 
2017年、CFGがマンC以外で初めて欧州のクラブに手を伸ばしました。
出資形態はやや複雑で、44%程度をCFGが、さらに44%程度をグアルディオラの実弟の会社が持っています。
 
別大陸への進出ではなく、ここでは同大陸の手頃なクラブをマンCの訓練場として抱えたという感じです。
微妙な出資形態でマンCとの利益相反を回避し、マンCから積極的に若手を期限付き移籍に出す――それに伴うお金の流れは?・・・この辺りから、FFP違反の香りが漂ってきますね。
 
ジローナの場所は、ざっくりバルセロナの近くで、よりフランスとの国境に近い。
長くスペイン3部と4部を行ったり来たりだったのが、近年は2部に定着し、ついに悲願の1部昇格を果たしたところをCFGが買収した格好です。

 

 


⑥四川九牛足球倶楽部(中国)
 
なかなか渋い買い物です。2019年2月、成都にある中国3部リーグの四川九牛を買収しました。
ここも出資形態は複雑で、CFG自体は28%、CFGの少数株主である中国系ファンドが54%を握っています。
単なる中国市場への進出というより、CFGの成り立ちを考えれば、悲願の中国帰還ということでしょうかね。
 
チームとしては、今のところ、ただの中国3部の弱小チームです。
それでも、買収後の2019年シーズンは2部昇格争いに絡んだようです。これからですね。
中国の成金企業が巨額の投資を行うこととは一線を画する、CFGらしい基盤強化を期待します。

 

 

 
⑦ムンバイ・シティFC(インド)
 
アジアの巨大市場への進出が続きます。
2019年11月、今度はインド第2の都市ムンバイのチームを買収しました。
CFGが65%を握るようですが、残り35%は元オーナーが引き続き保有しています。
インド市場へのスムーズな進出には、インドの財界有力者の協力が欠かせない、といったところでしょうか。
 
インドのプロサッカーは、少々複雑です。Iリーグとインディアン・スーパーリーグとが存在し、どちらも我々こそが正統なインドのプロリーグだと主張して譲りません。
経営的に成功しているのはインディアン・スーパーリーグで、FIFAとAFCが公認しているのはIリーグ。
統合しようという動きはあるようですが、総論賛成・各論反対でなかなか話は進んでいないようです。