無言の会話
2014・5・6~愛媛・松山市~
ついに、アイコンタクトで注文した。いつもの弁当屋さんに立ち寄ると、いつものお母さんは電話中だった。たぶん、予約の注文か何かだろう。メモを取りながら話していた。目が合うと、お母さんはニコッと笑うだけ。奥から出てきたおばちゃんに「大盛り!」とひと言話しただけで、また電話に戻った。声をかけられたおばちゃんはボウルの中から、漬けておいた鶏肉を油に投入し始めた。それから数分後、やっと電話が終わったお母さんが弁当箱にごはんを盛りつけ始めた。揚がったばかりのからあげも入れて、袋に入った弁当を手に「大盛りやろ?」と確認の声。うん。言っておくが、ここまでオッサンはひと言もしゃべっていない。厳密に言うと、何も注文していないのに、からあげ弁当が出てきた、という流れだ。
昨年の10月に初めて来てから、週に1回はからあげ弁当を買っている。最初のころは「何にする?」「からあげの大盛り」という当たり前の会話があったのに、いつのころからか、お母さんは手で山の形を描いて「大盛り?」のジェスチャーのみに。そして、この日はついに目と目が合っただけ。まるで母と息子のように、あるいは長年連れ添った夫婦のように、以心伝心しているかのようだった。まあ、こっちの勝手な思い込みで、お母さんは「いつものからあげ兄ちゃんが来た」と思っているだけかもしれないけど…。
