MRIの中(っていうの?)に入った人ならわかるが、検査中あの中はとてもうるさい。バケツの中に居て外からガンガン叩かれる感じ。

やかましいなあ、と思いながらも聞いていると音のリズムが取れるようになってくる。リズムが取れるようになると音楽と同じで、あんなに煩わしかった音でも心地よくなるしゅんかんがある。
でも、やはり音楽じゃないから前のリズムをくりかえしているようで、少しリズムが変わったり突然違う高さの音になったりする。

そうすると中の人(自分だけど)は、リズムが変わったり音の強弱が変わったりすることに、意味を見つけようとする。MRIの音自体には意味がないのだが、意味を付けられた音は自分の中で物語を持ち始める。

当然ながらMRIの騒々しい音にもしっかり構造的な意味はあって、撮影された画像には医学的な意味がある。その意味は知らなくても人間はいろいろなことに反応し、ときにはリズムを感じときには物語を感じて人生を楽しむ。

単調なら単調なりに楽しみを見つけるし、複雑なら複雑さの中に楽しみを見つける。
不思議なものである。


樋口由紀子さんの句集が出た。
めるくまーる、とはまた挑発的なタイトルで。

ノイズのような句もあれば
リズムのいい句もあれば
物語を感じる句もあれば
よくわからない句もある。

いろいろな読み方ができるだろうし、句はそれを拒まないだろうし、いろんな人がいろんな読みを言ったとしでも、まだ別な読みがあるのだろうと思う耐性の強い句集だ。

めるくまーる。
樋口由紀子もまた、道半ばなのだった。


句集から

蓮根によく似たものに近づきたい  由紀子

どのパンを咥えて現れでてくるか  由紀子

髪洗うときアメリカを忘れてる  由紀子

布団から人が出てきて集まった  由紀子

一晩だけ預かっている大きな足  由紀子

ダブルベッドのどこに置こうか低い鼻  由紀子

ゆっくりと春の小川がでたらめに   由紀子

オランダはまだ出てこない記憶力  由紀子

下着からはみ出しているいい気持ち  由紀子

何もない部屋に卵を置いてくる  由紀子

(ふらんす堂)