消えた「丹下左膳特集」 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信
.-左膳
丹下左膳 こけ猿の巻:左膳とちょび安:志村立美挿絵

情報紙正月号企画「丹下左膳特集」を夜なべして仕上げたら別企画が入ってしまった。やれやれである。これを機会にと、戦前戦後の映画、大河内伝次郎主演の「丹下左膳余話 百萬両の壺 (1935)」と丹下左膳(1953)」を観直した。原作ではこまっしゃくれた“ちょび安”も喜劇風な「百萬両の壺」では、可哀想なみなしご“ちょい安”になっていて、困ってしまう。もっとも、流行作家第一号の作者・林不忘が忙しすぎて原作が間にあわず、映画のシナリオが先行した。

林不忘はその映画撮りの進行を見ながら作品を書いたから、続編から善人左膳になってしまった。やはり妖剣士のほうが断然面白かっただけに残念である。左膳ものの小説は、初編「新編大岡政談」が面白く、続編以降はまったく詰まらない。もっとも林不忘は後世に残る作品など書く気などなく、受ければそれで結構「新編大岡政談」は大衆小説ですらない「新講談」であるとうそぶくくらいだから、初代流行作家らしくいさぎがいい。なかなか器の大きい人物だが、仕事のし過ぎで30ちょっとで亡くなっている。