矢代静一「江戸のろくでなし」 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信
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  ロッジ・オープン時に描いたパース

昨昼休み、久しぶりにご近所の古本屋をのぞいて、矢代静一の戯曲「江戸のろくでなし:月岡芳年考」を見つけた。これは矢代静一の浮世絵4部作のひとつで、他に「写楽考」「北斎漫画」「淫乱斎英泉」がある。「北斎漫画」は監督新藤兼人、鉄蔵(葛飾北斎)緒形拳、佐七(曲亭馬琴)西田敏行、お栄(鉄蔵の娘)田中裕子で映画化されたのでご存知の方も多いだろう。「ろくでなし」では、血みどろ絵で知られる月岡芳年を主人公に人間の狂気を描く。

サディステックな狂気を描こうとすればするほど、その対極にある純粋で無垢なものを意識しないではいられない。心の暗部を描こうとすれば、純粋な部分を見つめることになる。しかし、その相反する明暗部を意識すればするほど、心のバランスは崩れていく。大見え切ったような矢代の戯曲は、いまさら本といえるのでしょうが、心の在りように純粋に向かいあった時代(1982)があったのですね。まったくの創作のようで「月岡芳年考」にはあたらない。装幀はまずまず。

さて、現在は設計図キャド・データを元に3Dソフトで建築パース(完成予想図)を描きます。海外シンガポールあたりで制作することが多いそうで、こうした手描きする職人さんはもはや皆無だろう。10年くらい前まではパース専門の職人さんがいたのですが、もはや… 私は余技で随分描きましたが無用の技術となりました。実際の建物は見たことはないので、パースのような建物なのかどうなのか。湯沢にあるこのロッジはいまだ営業しているようですね。