韓国映画『毒親』 「不安からの愛」の行く末 | あなたの知らない韓国 ー歴史、文化、旅ー

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 ひさしぶりに韓国映画をみました。母の娘への愛の形を描いたものですが、それは度の過ぎた「不安からの愛」でした。

 

 『毒親』(原題:독친 ドクチン)2023年 キム・スイン監督

 

 主人公は成績優秀で優等生の高校生ユリ。そして過剰なまでにユリを愛する母ヘヨン。世間では理想の母娘だと思われていましたが、ユリは母であるヘヨンの厳しい教育方針と執着に対し、相当悩んでいました。模擬試験のある当日、消息を絶ったユリは、キャンプ場で遺体となって発見されます。捜査に関わったオ刑事は自殺の可能性が高いと考ましたが、母のヘヨンは自殺の可能性を認めようとしません。そんな中、担当教員ギボムがユリを呼び出していたことを知り、ヘヨンは、ギボムを疑って裁判を起こします。でも捜査が進むと、母の主張とは全く違う姿が浮かんできます。

 

 母親からの過剰な愛と、それに苦悩する娘の心の闇を描いたミステリードラマです。

 

 この母の娘に対する態度は愛から発するものでしょう。でもそれは娘自信の未来を信じての愛ではなく「不安からの愛」でした。母からすると、自分の娘への教育方針は正しい、娘は自分の言うことに従っていればうまくいく。逆らうことは許さないという立場です。それで娘の体質も無視して、牛乳や鮮魚を無理矢理食べさせる、学校の成績はオールAしか認めない、娘と仲のいい友達を不良だときめつけて間を遮断する。全てがそんな状況です。いわば親のかたくなな態度が娘を死に追い込んだのでした。

 

 いかに自分が相手のことを思ってのことだったとしても、それが過度の「不安からの愛」だったとしたら、「信頼からの愛」ではなかたっとすれば、相手は苦痛だとしか受け止まられないでしょう。切ろうと思ってもなかなか切れない、親子関係だから余計苦しいのでしょう。

 

 これは単に家族関係の問題ではなく、友人など周囲の人に対しても同様のことが言えるでしょう。「信頼からの愛」で相手をみること、互いに「信頼からの愛」で支え合う人間関係が重要だと思えました。

 

 数々の人気ドラマで活躍のチャン・ソヒが母ヘヨンを、カン・アンナが娘ユリを演じています。数々の人気ドラマの脚本を手がけたキム・スインが、自身の脚本ではじめて長編のメガホンをとった作品でした。。