こんにちは。今でも韓国や北朝鮮で国民的詩人として敬愛されている尹東柱。同志社大学構内にある彼の詩碑は以前に紹介したことがあります。今回は宇治市内にある彼の詩碑をご紹介します。
場所は天ヶ瀬ダムの近く、宇治川にかかる白虹橋北詰の道路脇に設置されています。「詩人尹東柱、記憶と和解の碑」。彼の生誕100年目である2017年9月28日に市民の方々の尽力で建立されました。高さ2m。
この場所に建立されたのも理由があります。尹東柱は同志社大学英文科に留学していましたが、1943年に帰国することを決心し、初夏に学友たちと宇治川の川辺で送別会を開き、その時に撮った写真が残されていたのでした。送別会からまもなく、7月に治安維持法違反の容疑で逮捕され、翌年、福岡刑務所で獄死します。
その最後の写真は、1990年にNHKと韓国のKBSが共同でドキュメンタリーを制作した際、尹東柱の学友だった女性のアルバムから見つかったそうです。送別会の折、学友から何か歌を歌ってほしいと言われ、「アリラン」を歌ったそうです。碑が設置された場所も、まさしく彼がアリランを歌ったと思われる近くの場所です。
碑に刻まれているのは「새로운 길」
「하늘과 바람과 별과 시」に収録されています。
새로운 길
내를 건너서 숲으로
고개를 넘어서 마을로
어제도 가고 오늘도 갈
나의 길 새로운 길
민들레가 피고 까치가 날고
아가씨가 지나고 바람이 일고
나의 길은 언제나 새로운 길
오늘도…… 내일도……
내를 건너서 숲으로
고개를 넘어서 마을로
(訳)
新しい道
川を越えて森へ
峠を越えて村に
昨日も行き、今日も行く
私の道、新しい道
タンポポが咲き、カササギが飛び
娘さんが通り過ぎ、風が立つ
私の道はいつでも新しい道
今日も明日も
川を越えて森に
峠を越えて村に
送別会で来た尹東柱一行も訪れたに違いない場所のひとつがこの吊り橋です。写真もここで撮ったものと推定されているようです。
ダム建設や水害などで当時とは変わってはいますが、今も吊り橋がかかっています。
詩の中に出てくるように、この橋を渡り、川を越えて対岸に行ったのでしょうね。
そう思いながら私も渡って見ました。
詩をくちづさみながら橋を渡ると、私も詩人になったような気分になりました。
宇治川の流れと天ヶ瀬吊り橋
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