短説「死神」 | 鶏肋的人生

鶏肋的人生

最近は、魚類・海獣類にはまっています。
風景や花の写真のときもあります。

死神

森田カオル

 突然、幽体離脱ができるようになった。


 初めは部屋の中だけをふわふわ飛んでいる
だけだったが、慣れるにしたがって家の外に
も自由に行けるようになった。

 

 ある夜、いつものように家の近くを飛んで
いると、黒い影のようなものが、近所の家に
入っていくのを見た。

 

 その家は仲の良いおばさんの家だ。
 

 他人の家を除くのは躊躇われたが、気になっ
て中へ入ってみた。

 

 黒い影は、そのおばさんが寝ているベッド
の周りをぐるぐると回っている。

 

 何だろう。その時わたしはその黒い影が何
か見当もつかなかった。

 

 でも、不吉な予感がしたので、翌朝、わた
しはおばさんに訊ねてみた。

 

「いたって元気よぅ。腰が痛い以外はね。」
 

 わたしの心配した体の不調はないようだ。
 

 その夜も、また黒い影がおばさんの周りを
回っていた。これは絶対に何かある。

 

「心配してくれるのはありがたいが、うちの
母はいたって健康です。先日の健康診断でも
問題はなかった。あまり変なことを言わない
でください。」

 

 同居しているおばさんの息子がわたしに釘
を刺してきた。

 

 もうこれ以上、この件に係わることはでき
ない。幽体離脱だとか黒い影だとか、説明し
たところでこちらの精神を疑われかねない。

 

 ところがその夜、おばさんはあっけなく亡
くなってしまった。訃報を報せる町内会の掲
示によると、心筋梗塞だったらしい。

 

 そしてわたしは、お通夜にも葬儀にも参列
を断られた。

 

 噂によると、おばさんを殺したのは「わた
し」ということになっているようだ。

 

 

 

 

 

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