平和の酔いどれ物語 1

テーマ:
名探偵コナンから、いつもの平和なお話を、
オムニバス形式で
時期もばらばらにしてあります


平和の酔いどれ物語

1: 告白 (刑事になった平ちゃん編)

刑事課の服部平次は、自他共に認める酒豪
でも、そんな平次も、年にたった1日だけ
酔いつぶれる日がある

今年も、その日が廻って来た

刑事課に配属されて2年目の春
今年も、開催された桜の季節に合わせた花
見の宴席だ

1年目の春、府警の婦警達は、めちゃくち
ゃ気合いと意気込みを持って参加した

「近年稀に見る逸材が刑事課に2人も配属
された!」

と騒がれていたからだ

一人は、言わずと知れた本部長の嫡男
もう一人は、その親友

服部平次と冴島晃は、同期入庁かつ超異例
のスピード出世で刑事課の門を叩いたのだ

長身でハンサムな2人は、確かに刑事課の
中でも目立つ存在で

だから、みんな、左手薬指に光る物には見
て見ないフリをしたのだ

25歳の若さで、既に同い年の嫁が居ると言
った2人だった

噂によると、晃の妻は、新人女医
平次の妻は、あの、遠山刑事部長の娘であ
り、某賞を大学在学中に受賞した研究員だ

晃の妻、翠は神戸に
平次の妻、和葉は英国に

つまり、2人はそれぞれ単身赴任中だった

「それだったら、居ないも同然でしょ!」

と言う、警察官としてあるまじき発言で2
人は、めちゃくちゃ絡まれたんだけど

その近寄る面々が、本題に切り込む直前に
この2人、泥酔し始めたのだ

それも、酔えば酔う程、愛妻の事をべた褒
めして、その名を叫ぶと言う有様で

晃に至っては、電話した後、明日は非番だ
から神戸に帰る、と言って帰ってしまった
のだ

それも、平次を連れて

さすがに、本部長の父親と同居は無理と一
人暮らしをしていた平次だったが、そこを
訪ねるような強者も数名居た

それを知っている晃が、平次をみすみす一
人で残して行くはずもなく

また、晃が来る時に平次を連れて来る事を
妻の翠も望んでいたのだ

和葉の親友として、不在の間に何かが起き
ては困る、と言う判断と、もうひとつ

晃と共にやって来る平次が、さらに酔って、
普段は明かさない愛妻への想いをぶちまけ
るのを録音して、ひとりで海外で闘ってい
る親友にプレゼントするためでもあった

タクシーで深夜にやって来た2人を、翠は
慣れた様子で迎い入れた

このマンションで、翠は晃とずっと同居し
て居たので、晃も、遊びに来ていた平次に
とっても、馴染みの場所となっていたのだ

おつまみと、酒を用意していた翠は、さっ
そくビデオカメラを回していた

平次も、撮影されている事はわかっていて
も、和葉に逢いたい、と言う気持ちは変わ
らないし、気の置けない親友夫妻の前でも
あるので、されるがままだった

「「「かんぱーい」」」

「おー、翠も料理の腕、上げよったなぁ」

「ホンマ?嬉しいわぁ〜
いっぱい食べてや?」

「翠、オマエは平ちゃんやなく、オレにも
っと優しゅうせえや〜」

「え?普段から、めーっちゃ優しいで?」

他愛もない話をしながら、どんどん酒も進
んで行く3人

流石の平次も、段々と目が座りはじめた

「ええなぁー、あきらは、みどりちゃんが
おって」

(ぷっ、み、みどりちゃんやって
初めてよばれたわ)

(しーっ、今年は昨年より凄いかもな)

「オレは、こんなにあいたいんに、オレの
かずはは、そうやないんやろかー」

そう言うと、またグラスを煽る平次

「そんなワケ無いやろ?アンタが帰って来
い、言うてくれるのを、誰よりも待ってん
のは、和葉やで?」

「せや、平ちゃんのこと、1番愛してんのも
1番傍に居たいんも、和葉ちゃんやで?」

むうっ、とした顔をする平次

「せやろか?こんなオレでも、よろこんで
くれるやろか?ってか、かえってこい、い
うたんに、まだかえってけえへんのは、ど
ーしてや???」

え?と顔を見合わせた2人

「服部、アンタいつ和葉にそれ話したん?」

1週間前、と不貞腐れて言う平次

(翠、今すぐ和葉ちゃんに連絡しろや)

(うん、してくるな)

翠は、どこ行くねんと言う平次をいなして、
隣室に行き、電話を掛けた

「ゴメンな、そっち何時やっけ?」
「(くすくす)おんなじ時間やでー!」

「え?」

さっき、大阪の服部邸に到着したと言う

「そうなん?アンタの旦那、うちで酔って
るんやけど、今」

サプライズで帰国したら、旦那は花見で不
在で、仕方が無いから旦那の実家に来たと
言う和葉だ

「ほな、生中継したるわ」

翠は、パソコンを立ち上げると、Skypeで
テレビ電話にした

和葉の隣には、何ごとかと静華さんも居る
リビングが映るようにして、翠も席に戻る

「なぁ、平ちゃん」

ん?と酒を煽った平次に、晃が言う

「和葉ちゃんのどこが好き?」と

「そんなん、ぜんぶや、ぜーんぶ、すきや
あたりまえやろー」

おこってても、すねてても、ないてても、
めーっちゃかわええんやで?

へーじ、ってよぶこえもすきやし、あのと
きにきゅってだきしめてくれるんもすきや

せやなー、やかましいわっておもうこごと
も、きけへんと、めーっちゃさみしいし

いねむりしとるすがたもみえんのは、やっ
ぱりさみしいし

ぎゅーして、ええことして、だっこしてね
たいんやけどなー

「かずはだっこしてねんの、だいすきやねん
けどなー、オレ」

でもな、ときどきめ、さめるやろ?
たまに、オレのほうがかずはにだっこされ
てねてんねん

そんときはなー、わるいなぁ、おもかった
やろーっておもうんやけど

なんや、めーっちゃうれしいねん

あぁ、オレ、ちゃんとあいされてんのやー
って、じっかんできるっていうか?

だいじにされてんなーって、しあわせやな
って

はよう、また、いっしょにくらしたいんや

いってらっしゃい、おかえりなさいって、
いうてもらいたいし、ちゅーしてほしい

「オレは、さみしいなー
かずはは、はようかえりたくないんかなー」

オレは、いますぐあいたいし、ちゅーして
ハグして、ええことしたいんやけどなー

なーんで、こんなにホレてまうたんやろー
ってか、オレ、めっちゃすきやねんけど
それ、おかしいんか?なぁ、あきら

「おかしくないで?オレかていまでも翠ん
こと、大好きやし、一緒に居たいし?平ち
ゃんと、おんなじやで?」

「晃くん」

せやろ?でも、みーんな、おかしい、いう
んやで?

ずっといっしょで、あきひんなんてうそや
って

でも、オレ、しんぱいはしぬほどしとるけ
ど、かずはにあきたことなん、いっぺんも
ないで?

せやかて、あいつ、いじっぱりでがんこや
から、オレにみせてへんかお、いっぱいも
ってんねん

オレなん、ぜーんぶみせてんのになぁ〜
あ〜、はようあいたいなぁ〜
かずは〜、まだかえってけえへんのか〜

「あしたは、かえってくるかなぁ〜」

すうっ

そのまま、空になったグラスを握ったま
ま転がってしまった平次は、すうすう寝
息を立てて眠りについてしまった

「あーあ、サプライズ、知る前に寝落ち、
しちゃったよ」

パタパタと、掛け布団を持って来た翠と晃
に寝かせられた平次

「和葉、アンタ、幸せもんやなぁ」
「せや、平ちゃん、まだ和葉ちゃんにぞっ
こんやで?」

Skypeの向こうでは、真っ赤になった涙目の
和葉と、爆笑している静華さんの姿が見える

「和葉ちゃん、アンタ明日の朝、翠ちゃん
の家に行って、平次、起こしてやったらえ
えわ」

「えーっ!」」

「翠ちゃん、晃くん、おおきになぁ
和葉ちゃんに朝食差し入れ持たせるさかい
よろしゅう頼みます」

「わぁい!静華さんのゴハン!めっちゃ楽
しみにしとるね」
「おばちゃん、おおきに!
平ちゃんの事は、任せとき」

翌朝、夜が明けると、大荷物を持った和葉
が翠夫妻の家に現れた

「アンタの旦那、まだ寝てるわ」
「ホンマや」

静華さんに持たされたと言うお重を開けば
豪勢な朝定食が

ちょっと台所借りるね、と言う和葉がお味
噌汁やら何やらを追加で作る

「おう、和葉ちゃん、お帰り」
「晃くんも、ありがとうね」

にこっと笑った和葉に、オレらはええから
寂しがり屋の旦那、起こして来たらええし
と笑う

「へーじ、へーじ!起きてや」

んー、いややー、と言う、まだ二日酔いの
平次の声が聞こえて来る

「服部平次!起きなさい!!」

がばっ、と勢い良く起き上がる音がして、
あ?か、和葉?と言う間の抜けた声がした

「私やなかったら、私は誰やねん」

もう、しっかりしてや、と言う声と、和葉
と呼ぶ、嬉しそうな声がする

「今日の平ちゃんは、きっとめっちゃ働く
でー」
「ホンマやね」

おはようさん、とキスを交わす晃と翠は、
和葉に甘えまくって目覚める平次を扉の
向こうに感じて、よかったね、と笑う

「「いってらっしゃい!」」

2人の嫁に見送られて、元気よく登庁する
夫2人組は、その日は鬼のような活躍を見
せたとか