★2015年 遠山の日に寄せて

お互いに忙しい日々やったけど、
顔を見られる時は、たとえそれが
一瞬であったとしても、穏やかで
優しい気持ちになれた

先日、捕り物の影響で、平次に持た
せていた御守りが、悲惨なことに
なった

オロオロする平次に、私の御守り
を貸してやった私

何度も繰り返し私達を守ってくれた
けれど、残念ながらもう限界やった

よし、ここはひとつ、新しくしよう

まずは生地探しからやな
次に組紐や

散々探しまわって、藍色に銀糸で
刺繍が施された生地と、朱色に金糸
で刺繍が施された生地を見つけた

組紐は同じ色にする

今回は、裏地の補強もして、御守り
の中に指輪やら何やら入れる平次の
ために、細工もしてあげる

もちろん、平次と工藤くんの命を
護った特殊金属も仕込む

御守りの中身は、ちゃんと神様を
入れるため、毎年平次と初詣しと
った神社にひとり出向いて、2人分
頂いてきた

ちくちく裁縫をひとり頑張って、
漸く2人の新しい御守りが完成した

ボロボロになった御守り

中身の神様は、今日、私が感謝を
こめて、神社にお返ししてきた

お手製の外見は、記念にしまって
おくことにした

ピカピカの御守りは、何だかどき
どきやね

「和葉、ただいま」

「あれ、おかえりなさい」

今日は帰れんかもって言うてたん
に、どないしたんやろ

「事件はあっと言う間に解決や
これ、御守り壊した詫びや」

「あ~!これ、食べてみたかったん
よ~!」

ビーカーに入ったプリン

「平次、はい、これ」

「お、ピカピカやん」

「バージョンアップしとるよ」

嬉しそうに、自分で中身を入れて
明日の支度に添えていた

「なぁ、たまには向き変えてもええ
かな」

私の身体をくるん、と反転させて
後ろから包みこむように抱えた

「あ、何や、オレが抱っこしとる
と言うより、オマエにおんぶして
もろうとるみたいや」

首筋に顔を埋めたり、耳に噛みつ
いてみたり、じゃれとる平次

「アンタ、へいたみたいやで」

そう言うだら、むっとした顔を見せ
拗ねた平次

可愛ええな、アンタ

くっついて、体温を分け合ううちに
眠くなって眠りに落ちた私達

翌日、意外な来客が突然現れること
など気付くことなく、のんきに眠る
私達やった