▪️27:00 sweet tea / side Kazuha 

「再会を祝して、かんぱーい!」

蘭ちゃんは泣くほど喜んでくれた

青子ちゃんと私で両側からほっぺに
ちゅーしてあげた

平次と黒羽くんがカップを落とした
けど、今日はええやんか

黒羽くんも、仕事から開放されて、
1人の男の子の顔

平次も、工藤くんも、ええ感じに酔
っぱらって、高校生の時みたいなや
んちゃな顔やった

「大学に、休学届け提出して来た」

「「「え?」」」

蘭ちゃん、散々悩んで、決断したら
しいねん

これから、こっちの大学へ編入する
ためのスクールに通って、秋の入学
を目指すことにしたのだ

「お母さんがね、若いんだから失敗
してもいい、やりたいことをちゃん
としなさいって」

蘭ちゃんが、追い詰められるように
バイトと大学の往復しかしないこと
に、おっちゃんが、ついに折れたら
しいねん

工藤くんは、蘭ちゃんが休暇中だか
ら遊びに来たと思っていたらしく、
びっくりしてたけど、とっても喜ん
で、まだ結婚した訳でも無いのに、
幸せにするから、とか何とか、口走
って、平次と黒羽くんに宥められる
有様や

夜、早々に酔い潰れた男性陣を寝室
に押し込み、私たちは一緒にお風呂
に入って、広いベッドに3人で寝た

「蘭ちゃん、これ、お祝いや」

恥ずかしがりながらも、とても喜ん
でくれた

「すっごく色々考えて、同じ苦労す
るなら、新一の側で苦労してみよう
かなって」

蘭ちゃん、実は大学の同期の子から
熱烈なアプローチを受けてたんよ

好きな人がいてもええ、だから僕に
もチャンスを与えて欲しいって

何度もノーと言うても、酔い潰れた
おっちゃんが、一度適当な約束をし
て、蘭ちゃんの夫候補のひとりに考
えてもええ、と言うたこと、まとも
に受けて、猛アタックを受ける結果
になったんや

おっちゃんが反省して、諦めさせよ
うと頑張ったらしいけど、失敗した
みたいやね
最終手段で、工藤くんの元へ逃すこ
とにしたみたい

「新一さん、蘭さんが来るの、と
っても楽しみにしてたんですよ?
私たちをわざわざ呼び寄せて、蘭
さんが喜びそうなお店、下調べし
たりして」

「ホンマやで、蘭ちゃん
一生懸命、平次にも色々と相談して
一緒に暮らして行くためにはどうし
たらええか、準備しとったよ?」

「和葉ちゃん、青子ちゃん」

「現在の新一さんを、明日、ランド
でよーく見てあげてください」

「せやね、それが1番ええよ
私らは、明後日の午後には英国に戻
らなアカンし、明日、どこかで必ず
2人にしてあげるから」

「うん、2人が居てくれて嬉しかっ
たよ?心強いしね」

工藤くんは、おっちゃんが何故、蘭
ちゃんを手放したか、理由を知らな
いままや

だって、蘭ちゃんも、私と同じで、
相手の気持ちを確かめるために、別
の人と、と言うストーリー、嫌いや
からな

蘭ちゃんには、焦らんでええから、
工藤くんには、何でも話してあげて
欲しい、と言うた

青子ちゃんも、それが一番いいと

「蘭さんの話を受け止められないほ
ど、器が小さい男には見えないし、
それくらい出来なかったら、探偵さ
んとして、NGだと思います」

「青子ちゃんが言う通りやで?」

「うん、頑張るね、ちゃんと言う」

3人並んで眠るなんて、楽しいな
問題は、男性陣はどないなっとんの
か、やけど

翌朝、早朝に着替えをして、私は
出かける前に、平次にマッサージを
受け、器具を付けてもらった

「しんどなったら、必ず早目に言う
んやで?こっちは車椅子で動いても
問題無いんやし、ええな?」

「大丈夫やって、平次」

キャップを被らせられて、出発や

工藤くんの車、助手席に座るのは、
もちろん蘭ちゃん
平次と私、青子ちゃんと黒羽くん

初めての合同デートやな

めっちゃ浮かれる私

「オマエが浮かれてどうすんねん
主役は前の2人やで?」

平次は呆れて笑った

だって、いいの

私が望んで、守りたかった2人が、
漸く、本当に並んで歩き出すから

こんなに嬉しい日は無い

油断したら、泣いてしまいそう

1年前に、あれほど夢見た光景が、
漸く実現する

嬉しくて、嬉しくて、震えそうだ

揺れる車内、平次がさりげなく私の
頬を指先でなぞった

ほろり、と溢れてしまった涙に気遣
われたと気が付いたのは、その後

他の人に気付かれんように、そっと
自分の指先で、目元を拭った