▪️25:00 easygoing  / side Kazuha 

「うわ~!本物だ!」

「すごい!快斗、すごいね!」

黒羽くんと青子ちゃんに、お餅のつ
き方を平次と教えながら、みんなで
お餅をついて、おばちゃんが少しだ
け味見してええ、言うてくれたんで
みんなでお餅を食べた

「餅、美味しいな」

「向こうでも、みんなでしたら美味
しいよね?」

「向こうではな、ホームベーカリー
で出来るねん」

「え?そうなの?やろうよ!ゆん
ちゃんが生まれたら、みんなでまた
やろうぜ」

縁側で、みんなで並んでわいわい
騒ぐのは楽しい

服部家には、クラスメイトや友達が
来るのは少なかった

原因は、私やねん

お父ちゃんが泊まりの日は、平次の
家に泊まる
お父ちゃんが迎えに来るまで、平次
の家に居る

私にとって当たり前の日常は、年頃
のクラスメイト達には変に映るらし
く、恋人同士でも無いのに同じ風呂
に入るのか、泊まるのか、オマエら
実は昔から出来てて、やりまくりな
んちゃう?とか、言いたい放題に言
われた時期がある

平次が友達連れ帰った時、私が家で
おばちゃんと当然のように居たのを
見られたことがきっかけやねん

それからしばらく、私は服部家に足
を運ばんかった

でも、平次が来たんや

「オマエひとりにして、何かあった
ら、親父達に怒られるのオレやし」

泊まり道具持って、おばちゃんから
持たされた言うお重持って

結局、平次が友達を家には連れて来
ない、宣言して、オマエは今まで通
りにしとけ、言うて、そうなったん
やけどな

晃くんは唯一の例外で、よう出入り
しとった
晃くんは、冷かさないし、平次が居
らん時は、平次の代わりに、送って
くれたから
私の家庭の事情も理解してくれる、
数少ない友達や

翠と付き合うようになってからは、
翠共々、2人でようかばってくれた

「何をぼんやりしとんねん」

「ん?何かええな、思って」

「え?」

「この家に、友達と一緒に泊まった
り、遊んだり出来るの、ええなって」

「そうか?」

「うん」

「オレは、英国のオレらの家に黒羽
達とかが泊まりに来るの、ええな、
と思うけど?」

「うん、それも嬉しいで?」

「くだらんこと、考えんなや」

「え?」

「ホンマの友達と、和葉が居れば、
オレはそれでよかったんや
くだらん噂話するやつとか、利用す
ることしか考えてへんやつらにオレ
のプライベート、詮索されたなかっ
たから、出禁にしただけのことや」

せやから、晃とか、剣道仲間は出入
りしとったやろ?と平次は笑った

私と平次は、縁側で最後のひとつの
餅をめぐって、熾烈なとっくみあい
を始めた青子ちゃんらを眺めていた

うん、せやね
私らのこと、ちゃんと判ってくれる
友達が居るもんね

ホンマは、ずっと平次に申し訳ない
と思うとったの
友達に無駄にからかわれて、嫌やっ
たよね、と思うて

英国でも、たくさん友達出来たもん
ね?それも、みんな私も平次もまと
めて仲良うしてくれるし

「言いたいやつらは、何がどうなっ
ても言うんや、せやから、いちいち
相手なんせんでええんや
オレらがちゃんと相手せなあかんの
は、オレらをちゃんと理解して一緒
にアホなことやってくれる、アイツ
らみたいなん、見てやらなアカン
やろ?違うか、和葉?」

「うん、せやね」

平次が頭をぽんぽんして、諦めの悪
い黒羽くんを羽交い締めにした
私は、青子ちゃんからお皿を奪い、
半分にしたお餅を、青子ちゃんと黒羽
くんの口に放り込む

おばちゃんは、写真を撮りながら、
笑っていた

「何や、青子ちゃんと黒羽くん見とる
と、へいたのお友達のわんこが増えた
みたいな気分や」

「ホンマやな」

おばちゃん、平次、あんまりや
黒羽くんはともかく、青子ちゃんまで

当の2人は、今度はへいたを交えて
じゃれあう

「箸が転んでも楽しい時期や、放っ
ておいて、夕飯の支度でもしよか」

「せやね」

夕暮れ時の服部家は、穏やかな時間
が流れていた