▪️25:00 easygoing  / side Heiji 

オレは黒羽に、和葉は青子ちゃんに
指導しながら餅をついた

きゃいきゃい騒ぎながら行われる餅
つきを、ちゃんと離れた縁側でおも
ちゃにじゃれつきながらも、へいた
は大人しく見守っていた

「いや~、楽しかった!」

めちゃくちゃ嬉しそうに喜んだ2人
オカンも満足気に眺めていた

黒羽達の結婚式は、正月明け4日に
大阪府内のとあるレストランで行わ
れることになった

2人の友達は、まとめて小型バスで
連れて来られることになっている

朝、オレらと黒羽達だけで教会で
挙式して、その後、レストランで
パーティー

彼女は今、毎日黒羽に付き添われて
美容院に通っている

和葉も挙式の時にお世話になった、
ヘアメイクの人が経営している店や

この間は、オカンに言われて、黒羽
にも、髪の手入れの仕方を教えた
やっぱり手先が器用なんか、あっと
言う間に覚えてしまった

「一緒にお風呂入ってくれたら、髪
を洗うところもやれるけど?」

「けっ結構ですっ!快斗のスケベ!」

ばっちーん、と小気味良い音が邸内
に響き渡った

ちっ、と舌打ちした黒羽は、恐らく
後日リベンジする気満々な悪い笑み
を浮かべとった

「オオカミさんとうさぎさんやな」

隣で様子を見守っていた和葉が、
苦笑しながらそう言うた

風呂上がりの彼女の髪を乾かす時も
ふーっと、警戒心バリバリの彼女と
隙を狙う黒羽の様子に、オカンと
和葉が笑い転げていた

一年最後の日は、黒羽が手品を披露
したり、オレや和葉が歌い踊って、
一足早う東京から戻って来た中森
警部と彼女を目一杯、楽しませた

オカンも、府警への差し入れを終え
我が家の余りの賑やかさに唖然と
しつつも、もっと本気見せんかい、
と煽り出した

黒羽が言ったのだ

和葉がそうだったように、彼女も
少しだけ、マリッジブルーになって
いるみたいだと

だから、年の瀬に、目一杯笑わせて
明るいいつもの彼女にしたい、と

「そう言うことなら任せとき」

オレも和葉も得意やねん
人前で歌ったりおどったりなん、気
がついた時にはもうしとったからな

彼女が好きな曲を教えてもらって
黒羽が好きな曲も教えてもらって
中森警部が好きな曲もやった

和葉にいたっては、彼女を引っ張り
出して、一緒に歌い踊りまくった

中森警部も、恥ずかしそうにしてた
娘が、和葉につられて笑い歌い踊る
姿を見て、嬉しそうに笑った

「3、2、1、ハッピーニューイヤー」

みんなで一緒に年越し蕎麦も食べて
警部やオカンも巻き込んでカード
ゲームもして、賑やかに年越しをし
たオレ達

へいたもちゃんと参加して、みんな
のところへ平等に甘えに回った

「ベビーマッサージの勉強した時、
一緒に覚えたの」

と言うわんこ向けのマッサージを
彼女がへいたに施すと、へいたは
とても気持ち良さそうにした

「あら、ちゃんと覚えておかないと
アカンね」

オカンは、やり方をビデオに撮って
彼女に色々と聞いとった

英国の灰原の姉ちゃんとも連絡を取
り、順調に帰国の準備に入っている
ことを確認し、旅行中の姉ちゃんら
御一行とも連絡を取った

工藤達一行は、かなりの珍道中にな
ったみたいで、心なしか工藤がやつ
れていた

花音は、はなちゃんを連れて来るら
しく、大好きなお兄ちゃんと、姉ち
ゃんも一緒やと言う事もあり、画面
越しでも大はしゃぎやった

和葉ん事も好きらしく、いっちょ前
に投げキスをしていた

こら、来たら気をつけなアカン
花音は、最重要危険人物だ
子供やからって、和葉にちゅーは
絶対させん

黒羽の彼女にも、興味深々で、黒羽
は苦笑しとった

「花音、黒羽と工藤を足して割った
みたいな感じやな」

「バカ言え、オレの方が紳士だっつ
ーの!花音みたいに何でも来いなん
て柄じゃねーよ」

黒羽は不機嫌そうにそっぽを向く

それはそうだろう
彼女はすっかり花音とはなちゃんに
夢中だから

こら工藤達一行が来たら、嵐の予感
しかせえへんな

オレと黒羽のため息をよそに、嫁さ
ん2人は、上機嫌ではしゃいでいた

今日はまだ、和葉の親父が居らんか
ら言うて、黒羽夫妻と中森警部は、
仲良う枕を並べて、川の字で客間に
寝とる

黒羽なりの気遣いやろな

オレは、和葉といつものように、
仲良う一緒に眠る

ちゃんと、あけおめは挨拶して、も
ちろん、ちゅーもハグもしっかりし
たし、和葉のマッサージも忘れずに
やったげたで?

来年は、もう少し身体が楽になると
ええな、と思いながら、抱き締めた

昨年の今頃は、オレも和葉も離れて
いて、一緒には居られんかったこと
を思い出して、きっと、東の2人も
一緒に居られる幸せを感じているの
だろうなと思い、オレは目を伏せた

和葉の元へ帰れたことを感謝して
一緒に英国で暮らせていることも
こうして、くっついて居られること
にも感謝しながら、ゆっくりと意識
を解放して眠りに落ちた

目が覚めたら、新しい一年が幕を上
げるのだ

だから今はこのままで
ゆっくりと微睡んでいたい
和葉と一緒に