▪️11:00 beautiful dreamer/ side Heiji 

東京に戻った工藤から、毛利探偵
が姿を消した、と連絡が入った

地方での捜査に参加する
しばらく戻れない

姉ちゃんにはそう言い残して、
心配するな、何かがあったら
大阪の服部邸を迷わず訪ねろ
そう言い残したそうだ

不安がった姉ちゃんの様子が
心配や、と言うので、和葉と相談
して、和葉とオカンを東京へ行か
せる事にした

和葉は、オカンの用事のついで
という事で行く、と
学校があるので、和葉も滞在に
制約がある

とりあえず、1週間

ということで、オレが2人を見送る

ここが凄いのが、あのおばはんや

ホンマに用事、ねじこんだんやで
それも、姉ちゃんも巻き込む用件
を、だ

「ついでやし、リアリティが無いと
アカンやろ?」

とか何とか言いながら、嬉しそうに
飛んで行きよったんや

まぁ、和葉はそれで少しは罪悪感
を持たずに行けたみたいやけど

和葉は、工藤から連絡を受けた後
少し落ち込んでいた
自分は、姉ちゃんを騙しとんのか
も知れん、と

オレ達が言えんかったのとは
訳が違う、と

落ち込む和葉にしてやれる事は
あまりなかった

オレに出来るのは、黙って出来る
だけ傍に居る事だけ

和葉の傍を離れるまで、あと1カ月
しかない
オレは、事件に飛び出す回数を意図的
に減らし始めていた

あまり頻繁に飛び出して居ると、
急に姿を消した時、それだけ騒ぎ
が大きくなるからや

受験が終わっている事も、あまり
広くに知らせんかったのもその
ためやった

受験を理由に、しばらくヘルプは
出来ん、と言う予定やねん
そうせんと、みんなが和葉に事情
を聴きに集まってしまうからな

幸い、学校の方はホンマにみんな
本格的な受験モードに入ったので
以前より余計な事で騒がれる事も
無くなり、オレも和葉も、みんなに
混ざって、受験勉強に勤しんだ

間もなく始まる戦争が遠くに感じら
れる程、静かな日々が続く

和葉からは、毎日メールが届いた

オカンは、ついでや、と言って
デザイナーとアシスタントも誘い、
姉ちゃんのサイズ確認やら、衣装の
打ち合わせを仕込んだのだ

「おばちゃんのおかげで、蘭ちゃん
落ち込む暇もないで」

今回ばかりは、和葉が主役やなく
姉ちゃんが主役

花嫁介添え人の衣装選びが今回の
上京の理由やからな

大阪の方では、もうすでに須藤の
衣装選びが終わっている
晃なんぞ、大喜びでその衣装選び
にもカメラ持参で参加しとったから

和葉は、この際やから、と工藤の
グッズのメンテナンスと、捜査資料
の整理に明け暮れているらしい

「ついでに、コナンくんに料理も
教えとんねん」

電話が来た時、明るくそう言って
笑っていた

「だって、死活問題やろ?」

そうやな、確かにそうや

そうでなくとも、余裕がある訳では
無い探偵事務所や

その主が留守にするっちゅーことは、
毎回豪勢に外食なんぞしとる場合や
ないもんな

和葉らしい選択、やな

そう言えば、この際だから、掃除
とかそっちも教えようかな、とか
言ってたな

…ご愁傷様、工藤

アイツにはええ経験や
何せ、生粋の坊ちゃんやからなぁ

いくらオレの家が、言うても我家は
一応公務員の給料で生活しとるから
アイツのとことは訳がちゃうねん

あ、オカンが実家絡みで教えとる
お稽古事やら何やらは、全く別や

オカン以外、誰もその収支を知らん

昔から謎やねん
ま、怖くて関わりたくは無いけど

和葉は無邪気に昔からよう懐いて
いて、オレにとっては七不思議の
ひとつ

だって、和葉はお化け屋敷の類いや
ホラーなんぞ全く受け付けんから

それやのに、初恋はあのキツネ目
親父やし、あの夜叉やで?

ホンマ、女はようわからんな

和葉が居らん間、今のうちに、と
ツレ達と遊び歩き、府警メンバーと
外食が続いたオレ
まぁ、3日で飽きてしまったんやけど

久しぶりにどっぷり本を読み耽り
ゆっくりすることが出来た

「ありがてーけど、超スパルタだな
和葉ちゃん、蘭より怖いかも」

まぁ、オカンに仕込まれた女やから
仕方ない
工藤は、散々教え込まれたらしい

でも、おかげで、姉ちゃんには
めちゃくちゃ喜んで貰えたとご満悦

そら良かったですな

ほな、そろそろうちの嫁さん、返し
てくれませんか?工藤ハン?

貸しやからな、と言ったら、オメー
じゃねーよ、和葉ちゃんに貸しだ!
ときっちり逆ギレした工藤

うん、その元気があるならええか

で、うちの嫁は?と言ったら、
きっちり約束の期限まではダメ、と
言って、電話を切られた

くそ、和葉とゆっくりしたいのは
オレや、オレ!

何だか腑に落ちないまま、オレは
1人で過ごすことになった

1週間くらい、なんて思っていたの
に、味気ない生活に辟易してしまっ
たダメなオレ

やっぱり、煩いくらいがちょうど
ええな、うん

結局、家中掃除して、夕飯の支度
までして、和葉達を駅まで迎えに
行ったオレ

「平次、ありがとう!」

和葉はそう言って笑ってくれたけど

「そのやる気、普段も見せてくれた
らええのになぁ~」

オカンは一枚上手やった

その夜

「一人暮らし気分はどうやった?」

「うーん、オレは3日ぐらいでええわ
つまらんし、な」

「そうなん?意外やな」

ふふふ、と笑った和葉を抱き抱えた

「一人暮らし気分より、オレとしては
和葉ちゃんといちゃこらしといた方が
ええんやけどなぁ」

あほ、とか、スケベ、とか言われる
けれど、くっついてちょっかい出し
ているうちに、寝てしまいよった

きっと、気張って来て疲れたんやな

ベッドに寝かせてやると、コロンと
奥に転がったので、そのまま寝かせ
空いたスペースに、オレも転がった

和葉の匂いがする部屋
すうすう寝息を立てて眠る和葉
妙に安らぐ空間に

自分も知らず知らず意識を手放した