▪️10:00 Festival / side Heiji

「平次!Happy Halloween !」

「うわぁっ」

朝から布団にジャンプされたオレ

和葉ちゃん?

男のコには、色々と事情があんねん
朝、意識も曖昧な時にな、イキナリ
飛び込まれたら、事故が起きるかも
知れんのやで?

天然無邪気なお姫様は、最近、仄か
に色っぽくなって、最強や
もう、オレ、耐えられへんかも

のんきに笑う和葉を組み敷いた

「オマエ、ええ加減にせんと、
襲ってまうで?こら!」

「ええけど、おばちゃん、カメラ
片手に待ち構えとるで?」

満面の笑みを浮かべる和葉
こら、本気や
急がなアカン

慌てて飛び退いて、和葉の髪の乱れ
を直してやって、服装にも気をつけ
すぐに階下に降りる

「何や、つまらんな
後3分してこなかったら突撃しよ
思っとったんに」

あ~、と、オレは膝から崩れ落ちた
オカンの手にはしっかりカメラ

朝からぐったりとさせられたオレ
和葉の荷物がやけに多い事に気が
ついた

「平次、覚悟しいや」

和葉は真剣な顔で言った
1年の時は、珍しく揃ってダウン
していたオレら
昨年は、オレは事件で居らんかった

和葉は、何も知らずに登校して、
しつこい3年らに追い回されたそう
途中で、友達がお菓子を分けてくれ
それで逃げ切った、と

「イキナリ抱きつかれたり、触られ
そうにもなって、大変やったの」

思い出すのも嫌や、と言って顔を
顰めた

と言うより、オレ、聞いてへん
誰や、抱きついたどあほは
触ろうとした奴は誰や?

和葉はええから、と言うと、オレ
に袋を渡した

「アンタの方がきっと大変や」

苦笑いをした和葉が、校門付近で
待機しとる騒がしい集団を指差した

一瞬の隙をついて、オレを置いて
和葉が抜け穴へと走り出した
慌てて後を追うオレは、気づいた
集団に追われた

「服部くーん、とりっく おあ
とりーと!」

あぁ、邪魔くさい
和葉に貰った袋から、適当に掴んで
投げて逃げ切った

教室に着いた時には、もうぐったり
和葉は苦笑しとる
でも、

「遠山!とりっくおあとりーと!」

「オレも!」

あほな奴らが現れた
和葉の事をずっと追い回している
奴らや

和葉にお菓子を渡されても、すぐ
また舞い戻り、強請る
お菓子狙いやない
和葉にちょっかい出すんが、目的

しつこさに、クラスメートも苦笑

オレは我慢の限界

ツレ達の間を縫って、オレは出入り
口に近づく

「もうお菓子、無いんや
みんなにあげる分、無くなってしま
うし、お終い、や、な?」

「ほな、和葉ちゃんイタズラさせ
てえな」

「せや、イタズラ、な?」

和葉が半足を引いて、投げる態勢を
取り、奴らが和葉の身体に手を伸ば
した瞬間、オレは和葉のウエストに
手を回して自分に引き寄せ、手を
伸ばした男のコの腹を軽く蹴った

「ええ加減にせえや
何、人のオンナにちょっかい出し
とんねん」

背後から抱えた腕は解かず、オレ
は怒気を隠さず相手を見た

「な、なんや、今日は来てたんか」

「ちょっとからかっただけや」

ちっ、と舌打ちをして、半分腰を
抜かしながら転げるように逃げた

「と、遠山、無事か?」

次に飛び込んで来たのは、晃達や

どうやら、オレが今日来てへんと
言う誤報を聞いて、和葉を心配して
駆けつけたらしい

「なんや、平ちゃん居るやん」

あー心配して損したわ~、と笑う
みんな、昨年の騒ぎを覚えていて
慌てて飛んで来たのだ

「平ちゃんのためやないでー」

これもいつものセリフ

おおきに、みんな
おかげで、姫は無事やで?

その夜

「和葉、Trick or treat 」

もちろん、お菓子を持っていない
事を確認して、声をかけた

もう、と言って笑った和葉に
キスを強請る
背伸びをしてキスをしようとした
和葉を抱え上げた

「ちゃんとしてくれたら降ろしたる
から」

苦笑いで、ぎこちなく顔が近づくと
そっと唇が重ねられた