▪️07:00 Summer festival /side Heiji

事件に追われながらも、受験生の
本業も追いつつ、気が付けば、
夏休み目前の暑い夏を迎えていた

秋の最後の大会に向け、部活も
熱気を帯びていて、オレも和葉も
大忙しや

和葉は、掛け持ちと言う事もあり、
その忙しさは倍
以前のように熱中症で倒れんように
見張るのも大変やった

試験の方は、2人とも上々の出来で
受験の方も、出願済の大学について
先生達からは、おそらく第一希望で
2人とも通るやろ、と言われている

結果は、おそらく夏休み明け頃から
順次届けられる予定

試験が終わればすぐに夏休み

合気道部、続けて、剣道部と最後の
夏合宿も予定されていた

事件に飛び回るオレも、今回の合宿
期間中は活動を停止する

大将として、最後の試合に賭ける

そうでもしなければ、あの凄腕には
勝てんから

ターゲットは沖田が率いる高校1本
に絞り込んだ

部員達の士気も高いし、晃のしごき
が効いたんか、みんな腕を上げて
来ている

マネの引継ぎも、須藤の頑張りの
おかげと、和葉のフォローで完璧

無事、今回の合宿を最後に、新米
マネにその業務を引継ぐ予定で、
一足早く、須藤と和葉は、剣道部を
引退する

和葉は、9月の試合を最後に
合気道部を引退

オレは、10月の試合を最後に
剣道部を引退

いよいよ、オレ達の高校生生活も
折り返し地点に差し掛かっていた

和葉の合気道部最後の夏合宿

オレは差し入れを持って顔を出す
つもりで居たんやけど、例のごとく
舞い込んだ事件に飛び出してしまい
間に合わへんかった

今回は、日取りが悪くて、そのすぐ
後に続けて剣道部の合宿やった

「無理せん方がええよ?」

「大丈夫や、最後やし、後任のマネ
さん達が全部支度してくれとるから」

準備があるから、と和葉はオレより
先に他のマネ達と合流して合宿に
向かってしまったらしい

「平次、和葉ちゃん、多分最後まで
は無理やわ」

「ん、わかった
ダメなら電話するし、誰かに迎え
来させてや」

意地っ張りな和葉は、最後まで絶対
弱音は吐かんやろと思う

オレも今回は稽古に集中せなアカン

結局、今回の合宿が一番きつかった
けれど、誰も脱落者を出さずに
乗り切る事が出来た

後任のマネ2人組が、元気よう跳ね
まわってくれたおかげで、須藤も、
ノックダウン寸前の和葉も助かった
と言っていた

顔色は悪かったが、気力で耐え抜き
和葉は無事、剣道部を引退した

帰りは、大滝ハンが立ち寄ってくれ
たんで、乗せて帰ってもらう

「「ただいまー」」

「おかえりなさい
お疲れ様、和葉ちゃん」

お疲れ様は平次やー、とか言って
オレに先に風呂に入れ、と言うと
自分は荷物を片付け始めた

「夕飯前に入ってしまった方が
ええよ、和葉ちゃんも」

「うん」

オカンにひとしきり、最後の合宿の
様子をハイテンションで喋り倒した
和葉は、結局、風呂上がりにダウン

物音がして、慌てて台所から駆け
付けたオカンに呼ばれたオレ

湯上りに着るお気に入りのタオル地
のワンピースを着るのが限界やった
様子

倒れ込むように、と言うよりも、
脱衣所で熟睡していると表現するん
が正解やろ、あれは

頭に被っていたバスタオルで、剥き
出しの肩も包んで、そのまま部屋に
運び込んだ

オカンと2人がかりで、髪を直した
りして、ベッドに寝かしつける

今日はもう、このまま目を覚まさん
やろう

「おやすみ、和葉 お疲れさん」

ちゃんと、気付いてたで?
オレのボロい剣道着、丁寧に修繕され
洗濯もされとった事

剣道部の後任の2人が言っていた
剣道着の修繕の仕方も、手入れの
仕方も全部教わった、と

差し入れのレシピも、世話のお作法
も全部教わったから、大丈夫ですと
笑顔で宣言してくれた2人

「私たち、合気道部の合宿も、
お手伝いに行ったんですよ」

和葉が参加する最後の合宿

どうしても見学したい、と言った
2人に、合気道部の顧問が手伝って
くれるならええよ、と言ってくれた
そうだ

アイスの差し入れを持って、見学に
行って、手伝いもしたと言う

「どんなんやった?」

「…凄かったです」

和葉のファンで、試合にも足を運ぶ
2人、今まで何度か稽古に顔を出し
ていたけれど、あんなキツイ稽古、
初めてです、と言う

「最後まで稽古について行けたの、
遠山先輩だけでした」

許可を得て、撮影したと言う写真を
転送してもらった

袴姿の和葉は、やっぱり凛々しくて
オレの好きな姿や

「引退試合も必ず行きます!」

キラキラした笑顔で宣言する2人に
剣道部の事も頼むで~と言うと、
明るい笑い声が返って来た

とりあえず、剣道部の未来も安泰や

後は、有終の美を飾るのみ

合宿で疲れてはいたけれど、軽く自主
トレを行った
日々の鍛錬を違えると、取り戻すのが
大変になるし、な

翌日も和葉は眠り続けた

オカンも心配しかけた、夕方に目を
覚まして、ほぼ丸一日寝てしまった
事を知ると、仰天しとった

仰天したのは、オレとオカンの方や

夕飯食べながら、寝落ちしたんや
殆ど箸もつける前、コントみたいな
寝落ちに、オカンも大爆笑

「お味噌汁に顔、突っ込まんで
良かったなぁ、和葉ちゃん」

ホンマや、あと数秒、オレが手を
伸ばすのが遅れたら、赤ちゃん
みたいに、顔から突っ込む所やっ
たんやで?まったく…

結局、また部屋まで運び込んで寝か
せたんやけど、和葉の部屋、2階
やなくて、1階が良かったんと
ちゃうやろか

朝まで眠り続けた和葉を、さすがに
もうアカンやろ、と言う事で、オレ
とオカンで叩き起こした

「あ~もったいない!丸2日も無駄
に眠ってしもうたー!」

元気よう朝飯食べながら、盛大な
タメ息を吐いた和葉

タメ息をつきたいのはオレの方や

せっかく、2日間、呼び出しも無く
家に居ったのに、一向に目覚めない
眠り姫と、監視の目を光らせる夜叉
の間で、オレはただ、勉強する外
無かったんやからな

まぁオレらやったら、そろそろ携帯
が鳴りだす頃やな、と思っていたら
案の定、元気に鳴りだした

和葉がやっぱりね、と言う顔で笑う

オカンの目を盗んで、和葉に軽く
キスをしてからオレは家を飛び出た

一刻も早く片付けて、家に戻るため
必死で事件を追う

ふと、世間一般の旦那さんも、仕事
こんな気持ちでやっとるんやろうか
と思ったのはナイショ、や