▪️side Heiji :Step by step  23

櫻の季節が終わり、深緑が美しい日々が
巡って来た

良く晴れたある日、両家揃って結納式
つつがなく執り行われた

オカンが用意した和葉の振袖は、和葉
とても良う似合っていた
繊細な刺繍が施された、艶やかな振袖

婚約指輪は、オカンと和葉の母親が遺した
婚約指輪がリフォームされた結婚指輪は、
カップルリングをそのまま流用する

オレ達の事を知った職人が、和葉の事情を
知り、急ぎ用意してくれた

いずれ、社会に出て、自分で稼げるように
なってから、和葉にはちゃんと贈る事を
オカン達には約束した

形式だけや、と思っていた和葉は、婚約
指輪に仰天して、その指輪の元を知ると、
子供みたいにわんわん泣いた

「おばちゃんと、お母ちゃんの大事な、
大事な指輪なのに~
私なんかにもったいない~
お父ちゃん、おっちゃんゴメン~」

オッチャンやら、親父達は呆気にとられ
ながらも、大笑い

何や、大人っぽくなって来たと思って
けど、相変わらずやなぁ、和葉

みんなそう言って笑っていた

オレはひとり、泣き止ませようと慌てた

その数日後、オッチャンの姿は大阪から
消えた

「和葉~!荷物、これで最後か?」

「うん、それが最後や」

和葉の荷物を持って、一緒に家を出る
和葉の手をとって、一緒に家に帰る
今日からは、帰る家は同じや

「「ただいま~」」

「お帰りなさい」

出迎えたオカンが、用意していた部屋
和葉を誘導する

いつも、和葉が泊まっていた2階の客間は
密かに改装された

和葉に似合う、明るく広い部屋
家具は北欧調のモノで統一され、明るい
色合いの絨毯とカーテンにベッドカバー

ベッドは大きいモノが搬入された

今はまだ、アンタは使ったらアカン
言ったオカンは、いずれ、家を出るオレ達
が、帰省した時に使えるような部屋にした
と言っていた

確かに、2人暮らしの1ルームの様子

和葉はもちろん、めちゃくちゃ喜んだ

そして、

親父達の寝室へ出向き、挨拶をした
ちゃんと、婚約指輪をはめて

「至らない点が多いと思っています
アカン時は、ちゃんと、平次同様に叱って
ください
末長く、よろしゅうお願いいたします」

キレイな姿勢で、きちんと頭を下げる姿は
凛々しく、美しい
武道を嗜む時に垣間見せる姿だ

親父は、和葉に門限を伝え、ひとりでの
登下校を当面禁じた

「はい、わかりました」

そう言った和葉に、親父は相好を崩して、
それ以外は、今まで通りや、と言った
その言葉に、緊張を解いた和葉が笑う

この日から、和葉は服部家に完全に
その住まいを移した

もちろん、約束は約束やから、一緒に
いちゃこら眠ることは敵わんけど

でも、眠る前に、おやすみのちゅー
くらい、ええやん?

真っ赤になってジタバタする和葉を捕まえ
小さな真っ赤な顔を両手で挟んで、軽く
何度も啄むようにキスをして、ぎゅっと
ハグしてからベッドにしまって、電気を
消してやった

相変わらず柔らかく温い身体
ホンマは抱き込んで眠りたいんやけどな

階下に夜叉が待機しとるから
迂闊なことは出来ん

はぁ、生殺しや、ホンマに

自分のベッドに転がって、ため息を吐いた
あぁ、ここからが辛いなぁ
大丈夫かな、オレ

でも、まぁ、ちゅーもしたし、ハグもした
からええか

そんなん考えとる間に、すっかり眠って
しまったオレ

アホやな、ホンマ
大丈夫かな、オレ

2015/08/08    初稿
2015/11/06    加筆&改訂&改題