▪️side Heiji :Step by step  9
 
博士の用事に便乗して、工藤が突然、大阪
にやって来た

博士と、小さい姉ちゃん(灰原)の2人は
知人の家で何やら研究の実験に入ると言う
ので、工藤はオレの家に泊めて、帰りの
新幹線で合流する事にした

駅に迎えに行くと、小生意気な小学生が、
遅い、と言いながら待っていた

「ちょっと稽古が長引いたんや」

部活帰りの高校生と、不機嫌な小学生と
いう変な構図

「まぁまぁ、アイスでも買うたればええ
のんか?」

軽くからかっただけやのに、もの凄い
キックが飛んで来た

「このクソガキ!泊めてやらんでもええ
んやで?」

ムカつく程ニヒルに笑う小学生に、ムキに
なる高校生のオレ

「何を往来で騒いどんのやっ!」

「痛ぇっ!」

いきなり、背後から扇子で殴られた

「あ、静華さん!」

おばはん、と言うと怒られると知っている
出来のええ小学生
おりこうさん、と言わんばかりに笑顔を
見せるオカン

「よう来たなぁ…コナンくん
今晩は、ご馳走やからな?」

わーい、と無邪気な子供を見事に演じる
コナンと、オカンは手を繋いで家路を急ぐ

家に辿り着くと、オレと工藤は、オカンに
風呂に放りこまれた

「今夜は府警の面々も来るし、今のうち
やないと、アカン」

風呂上がりは、何やかやとオカンの手伝い
をさせられる

「ほな、先に食べてしまう?後じゃあ
ゆっくり出来んから」

オカンと工藤とオレ、と言う何とも微妙な
顔合わせで夕飯をとる

(当然、オレは和葉の話題で散々からか
われた)

片付けをしていると、すぐにどかどかと
馴染みの面々が訪れた

「何や、今日は毛利さんとこの坊主
一緒か」

コナンとして、府警の面々とも面識がある
ので、気が付いた面々が、工藤に次々と
声をかけた

「毛利さんとこのコナンくんか」

親父より先に家についたオッチャンは、
工藤を見つけると、ええから、と言って
抱き上げて、自分の席の隣に座らせた

「何や、平ちゃんが小っさい頃を思い出
してなぁ、懐かしいなぁ」

そう言って、コナンの頭をぐりぐり撫で
まわし、あれやこれや食べさせながら、
毛利さんは元気か、とか、蘭ちゃんはどう
や、とか仲良う話しこんでいた

その後、親父も合流して宴会は、さらに
加速した

和葉が居らんので、アイドルがいないと
淋しがりながらも、その代わりや、と
言わんばかりに、子供のコナンを府警
メンバーは可愛がり、散々、構い倒して
いた

終いには、親父とオッチャンに捕まって
いたんやで、アイツ

「細いなぁ、少し鍛えんと、何かあった時
色々と大変やで?」

「せやなぁ、工藤くんが居らん間は、
蘭ちゃん護らなアカンし」

オッチャンは、刑事時代の毛利探偵と交流
があった様子で、お互い、事情は少し違う
が、父娘で暮らす身、どうしても娘が気に
なる様子だった

「再来月の頭には和葉が帰ってくるし
蘭ちゃんと一緒にまた来たらええ」

オッチャンはそう言って、自分の連絡先を
コナンに知らせた

「何でもええ、小さな事でも何か異変が
あったら、連絡し?」

そう言って、コナンの頭を撫でて、親父と
一緒に府警に戻って行く

帰らない、というか
帰れないたくさんの刑事を、オカン共々
雑魚寝させて、片付けをすると、結構な
時間になった

「コナンくん、疲れたやろ?平次も、
もうええよ」

そう言われて解放されたのは深夜や

工藤は、どうやら色々な情報を得る事が
出来たらしく、大変やったけど、有意義な
時間を過ごせた、と喜んだ

「蘭の事、サンキューな」

何の事かと一瞬思ったけど、すぐに理解

「和葉の留学、手伝わせた礼や」

あの後、姉ちゃんから手紙が届いたと教え
てくれた
誤解してゴメン、帰って来たら、付けてね
と書いてあったらしい
本当はとても嬉しかった、と

「和葉ちゃんに感謝、だな」

「え?」

「和葉ちゃんに、怒られたらしい
一生懸命考えたんだろうから、素直に
その気持ちを汲んでやれって
浮気の疑いがあるなら、服部に調査させて
も良いって
だから、信じてやれってさ」

オレは、飲んでいたペットボトルの水を
噴き出しそうになる

「和葉ちゃん、すげーよな
ちゃんとサポート出来るようになりたい
ってさ
オメーに、護られるだけじゃ嫌だ
もっと頑張って、頼られるくらいになり
たいって」

留学相談の時、和葉はそう言っていた
らしい

「帰国したら、褒めてやれよ?」

「わかっとるって」

恥ずかしくて、この話は終いや、と電気
を消して、布団をかぶった

オカンや親父達に剣道の稽古も密かにつけ
てもらっていた和葉
一体、アイツはどんだけ強くなるつもりで
おるんや?

あ~、オレは頭が痛い
あのじゃじゃ馬、跳ねる勢いは増す一方
やないか
そろそろ、あのしっぽ、止めさせないと
アカンかもしれないなぁ

そのまんまで、もう十分、オレのサポート
出来とるんやけどなぁ

ため息を吐きながら眠るオレを、クスリ、
と工藤は笑いよった

(くそ~、この借りは返すからな、絶対、
覚えとれよ~!工藤!)

2015/08/06    初稿
2015/11/03    追記&改訂&改題