走行中に白煙を吹いてダウンしたとレッカー入庫のエブリィ。
問診からはタービンまたはエンジンのブロー濃厚、点検していきます。
エラーは3番の失火のみ。
スパークプラグを取り外しにかかると、明らかに締付が緩い。
ユーザーさんに聞くと自分で交換したとの事。
これは1番。
こちらは3番、外側電極が溶損。
溶損した電極がシリンダーの中へ落ちて、ピストン、リングあるいはシリンダーに影響してのエンジンブローと予想。
圧縮を見てみます、こちらは整備書上の基準値。
ターボ車なので、圧縮値下限は880Kpaで気筒差は98Kpa以下。
1番。
こちらの計測機器の圧力単位はPSI(ポンド/平方インチ)なので変換すると
173.2PSI=1194.17Kpaとなり、優秀。
2番。
同様に、145.8PSI=1005.26Kpa、ちょっと低い。
1番との気筒差は188.91Kpaとなり基準値の倍となりアウト。
ですが、実際はこのくらいだと普通に走れると思います。
問題の3番。
同様に、0.6PSI=4.14Kpa、論外、全く圧縮無し。
という事で3番のブローが確定です。
検査カメラを3番シリンダへ突っ込んでみますが、確認は難しい。
私の推測原因ですが、ユーザーさんが交換したスパークプラグ締付不足。
締付が緩いとプラグの熱がシリンダヘッドへ放熱されなくなるのと、燃焼ガス吹き抜けによって高温化、結果溶損。
緩すぎても締めすぎてもトラブルになります、必ずトルクレンチを使ってください。
さて、エンジンオーバーホールかASSY交換、または諦めるか。
ユーザーさんの選択はエンジンASSY交換でした。
うちで手配可能なリビルトエンジンの見積も行いましたが、エンジンは自身手配との事。
持込になるので作業料金が変わるのと、一切の保証は無いという事を了解いただき作業開始。
キャブオーバーなので座席を外して作業開口を取ります。
冷却水やらオイルやらを抜いて色々外して行き、取りあえずATを降ろす。
整備書はエンジンとATを一体で降ろすようになっていますが、大きくなるのでかなり大変なのと、どのみち降ろしてから切り離さないといけないのでこの方法を選択しました。
マウント位置の問題でATを降ろすとエンジンが前方へ傾斜しますが、それだけ気を付ければ大丈夫です。
さらに色々外して行き
エンジンが降りました。
この状態でユーザーさん手配のエンジン到着を待つこと2週間。
到着しました。
エンジン回りの部品や補器を組み替えて行くのですが、タービン取付のボルト。
3本中2本が緩んで脱落寸前でした。こちらも自身で交換歴があるらしい。
そして排気マニホールドの遮熱版取付部がボルト折れ込み。
リカバーにかかります、車上では無くマニホールドを降ろせるので楽。
リカバーの道具類。
出来るだけセンターに穴を開けて、エキストラクターで挑戦しましたが残念。
この方法は抜き取り時に固着で折れたボルトには期待薄です。
なので下穴を開けてタップを切る。
ボルトがすんなり入る事を確認してOK。
載せる準備が完了。
ATも載せる。
後は元通り組んで、オイルや冷却水を注入。
ドライスタート対策の後、始動。各部点検の後、試走して完成です。
ありがとうございました。