監視カメラが見てた痴漢の被害者との密会・鰻のDNAが暴く死亡時刻!!
 都内の廃屋で伊吹忠生という編集プロダクション社長の他殺死体が見つかった。42歳の伊吹は独身。会社が設立された10年前から経理を担当してきた中島雅子の話によると、会社の業績はこの2、3年ずっと安定していた。解剖で胃の中から未消化の鰻が検出されたことから、捜査陣は伊吹の財布にあった鰻屋のレシートを元に足取りを追い、同時に人間関係の調査を開始した。


①編集プロダクション社長 天宮良

 

線路脇のゴミ捨て場で発見された天宮の死体は死後1週間。

財布には1週間前の3月24日夜9時頃の鰻屋のレシートがあり、携帯電話は24日の5時過ぎ、出版社企画室長の河原崎建三と生保の外務員 川上麻衣子への通話が最後だった。

天宮の車には彼の血痕があった。

別の場所で殺害されて、現場まで彼の車で運ばれたらしい。

 

川上麻衣子に話を聞くが、天宮の会社と生命保険の法人契約をしていたが1年前に乗り換えられてしまい、それ以降付き合いわないと話し、電話は天宮から「個人年金のパンフレット」を送って欲しいと頼まれただけだと話す。

24日の夜も職場の同僚と飲んでいたらしいし、彼女は車の運転ができない。

 

鬼貫さんは彼女に見覚えがあった。

半年前、痴漢被害にあった彼女と加害者とされる平田満が警察署で激しく言い争うのを見ていたからだ。
「痴漢などしていない」と主張していた平田満だったが、警察に捜査対象になると長い裁判が待っていて、名前が公になって仕事にも影響が出ると言われる。

「被害者は示談にしても良いと言っている」と警察も示談を勧めてきたので最後には慰謝料を支払うということで決着。

しかし、事件のことが週刊誌の記事になった上に平田の勤務先まで書かれていた。

出版社に勤める平田にとってはライバル関係の出版社の雑誌。

平田は責任を取って退社し、タクシー運転手になっていた。

 

もう1人の通話相手、河原崎は平田の勤めていた出版会社の企画室長。

天宮とは仕事上で関係があったという。

 

出世頭だった平田は本来、企画室長になる予定だった。

当時の部下は「そんな大切な時期に痴漢なんてするわけがない」と言う。

河原崎は天宮を重宝して後押しをしていたが、平田はまったく買わなかった。

天宮は平田に接近を図ったが相手にされず、天宮には死活問題。

そんな平田が失職してホッとしたのは天宮。

彼にとって、やり易い河原崎が室長になり、そのきっかけを作ったのはかつての恋人の川上麻衣子。

出来過ぎている。

 

平田のアリバイを調べにタクシー会社へ出向くが、タコメーターによると彼のアリバイは完璧だった。

タクシー会社近くの喫茶店に入った鬼貫さんたちはそこで、仕事の途中で寄ったという川上麻衣子の姿を見つける。

平田の職場が近くにあると聞いた麻衣子は「彼に会ったら、怖いわ」というが、平田が本当に表れてしまう。

「妙なところに妙な方々がお集まりですね。 これはどういうわけですか?」

麻衣子には「お久しぶりです、お元気ですか」と無表情な彼に対し、麻衣子は動揺した様子。

麻衣子のアリバイを証言した同僚女性によると、彼女はここ2、3カ月様子が変わったと。

落ち着いてきて女らしくなった彼女には、誰か結婚を考える人がいるのではと言う。

 

麻衣子が車で引かれそうになり、コンビニの防犯カメラから犯人が河原崎だったと分かる。

河原崎を追及すると、平田の痴漢でっち上げを認める。

「あいつが企画室長になったらやりにくいだろう」とけしかけたのは河原崎だが、計画を考えたのは天宮。

しかし、河原崎宛に「去年の夏の痴漢騒ぎはでっち上げ。 無実の平田満を復職させろ。でなければ事実を公表する」という匿名の手紙が送られてきた。

天宮に話すと麻衣子が捨てられた腹いせにやっているのかもと。

天宮殺害日の電話は「これから女に会って始末をつける」という連絡だった。

そんな天宮が殺害され、事実が公表されるのではないかと恐れた河原崎は自分で麻衣子を殺そうとしたのだった。


鬼貫さんは再び、平田の会社近くの喫茶店へ。

ウエイトレスによると平田と麻衣子は店で何度か、会っていた。

週に1~2回は麻衣子が店にやって来て、仕事柄いつ来るか分からない平田を辛抱強く、待っているという。

黙って珈琲を飲んで帰るだけだが、大人な2人はとってもいい雰囲気だと。

警察署で酷く言い争っていた被害者と加害者が密かに会っている…。

 

鰻屋の店主に話を聞くが、天宮のことも覚えていないし、平田の写真を見せても分からないという。

話の流れからこの店の鰻は国産で「DNA鑑定してもらってもいい位だ!」と店主は自慢。

そこで思いついた鬼貫さん…。

 

殺人の犯人は川上麻衣子で、死体遺棄は平田満。

死亡推定時刻は鰻屋のレシートと解剖によって分かった鰻の消化具合で割り出された。

しかし、レシートに思い違いがあった。

レシートが出された店の鰻は国産で天宮が食した鰻はDNA鑑定で外国産だった。

 

去年の夏、落ち込んでいる様子の天宮から「会社がこのままじゃ潰れる。平田という狡猾な奴が自分の世話になっている人を貶めようとしている。そうなると自分の会社も危ない」と相談され、痴漢事件のでっち上げを持ち掛けられたのだった。

事件後、妊娠したが天宮からは「結婚する気も親になるつもりもない。自分の子かも分からない」と言われて振られた麻衣子。

その上、流産してしまった彼女は自殺しようとするが、偶然そこにいた平田満が救う。

それから何度か会ううちに、気持ちを通わせていった2人だが、麻衣子は痴漢騒動の真相を話せずにいて、平田は事件は麻衣子の勘違いが原因と思っていた。

自分のせいで平田が職場を追われたことに悩んだ麻衣子は河原崎に脅迫の手紙を送った。

しかし、天宮から連絡があり、鰻屋で会うとお金を手渡してきた。

きっぱりと「自分の目的は平田の職場復帰だ」と言って自宅マンションに帰ってきた麻衣子を天宮が追いかけてきた。

どうしてお前が平田の復帰に力を貸すんだ?

そこに平田が訪ねてきた。

なぜ天宮と麻衣子が知り合いなのか理解が出来ない平田。

天宮は笑いながら真相を話そうとする。「この女はね、私の…」

麻衣子は思わず天宮を刺してしまった。

いつかは本当のことを言わなければと覚悟はしていたのに…。

平田に詫びながら泣いている麻衣子をアリバイつくりの為に同僚の自宅に送り、鰻屋で食べた後に暫くタクシー業務を続けた後に、鰻屋のレシートを天宮の財布に入れて遺体を遺棄した。

 

平田の供述によると、数日前から渡そうと持ち歩いていた指輪を渡そうと麻衣子のマンションを訪ねて、天宮と遭遇してしまったらしい。

警察署の廊下ですれ違った2人。

平田は麻衣子に「私と結婚してくれないか。返事は刑が終わるまで待ちます。」と。

平田は長くても1.2年。その後何年、待つことになるのか…。

 

このシリーズの羽場裕一は大好きだわ。

いつから悪い奴メインになっちゃったのか。

そして、左時枝も定番な「不幸なおばさん」じゃなくて、明るく美人な鬼嫁な感じが振りきれてて素敵ラブ


鬼貫八郎…大地康雄
 木原二郎…平田満
 新関さつき…川上麻衣子
 鏑木博文…河原崎建三
 中島雅子…あめくみちこ
 伊吹忠生…天宮良
 碓氷刑事…羽場裕一
 黒川課長…天田俊明
 島田刑事…十貫寺梅軒
 田代刑事…森本浩

【原作】鮎川哲也(『宛先不明』より)