私は宇宙人(エイリアン)諸星ヒカルである。都内の某大学で食品関連の講師をしている。本来の業務はこの惑星の調査であり、毎回宇宙の本部に報告している。調査の範囲は広く、政治、経済、戦争という固いテーマだけでなく、アニメやマンガ、芸術など多岐にわたる。片腕となるモノリスは常時ネットや無線を監視していて重要なものを私に伝えてくれる。先日、コンサート会場におけるテロをロシアに連絡したが、有効活用されなかったのは残念だ。

 

 本欄では食品に関するレポートを取り上げている。今回のテーマはクレープである。クレープ(フランス語: crepe)は平鍋(パン、フライパンなど)で簡単に焼いて作れるパンケーキの一種である。フランス北西部のブルターニュが発祥の料理であり、そば粉で作った薄いパンケーキのガレット(galette)という料理が元になっている。

 

 ブルターニュは土地がやせていて気候も冷涼である。小麦の栽培が困難で、そばを栽培して、そば粥やそばがきにして食べていた。ある時、そば粥を焼けた石の上に落としたところ薄いパン状に焼きあがることを発見した。石で焼いたことからフランス語で小石を意味するガレ(galet)にちなんでガレットと名づけられたという。

 

 その後、アンヌ王妃がフランス王ルイ13世に伴ってブルターニュを訪れた。その際、庶民が食べていたガレットを偶然口にして気に入り、宮廷料理に取り入れた。アンヌ王妃はスペイン王フェリペ3世の長女でルイ13世の妻である。生地はそば粉から小麦粉へ変更され、粉と水と塩のみであった生地に牛乳やバター、鶏卵、砂糖などが加えられよりおいしく進化した。焼いた際にできるこげ模様が縮緬(ちりめん)に似ているため、クレープ(絹のような)と呼ばれるようになった。

 

 現在のクレープは巻いたり折ったりして、多様な材料を包み込むことが一般的である。生クリームやフルーツ、ジャム、チョコレート・ソース、アイスクリームなどを包み込んで菓子として食べることができる。また、ハム、鶏肉、チーズ、野菜などを包みこんで軽食として食べる場合もある。前者をクレープ・シュクレ(砂糖味のクレープ)、後者をクレープ・サレ(塩味のクレープ)と呼称する。

 

 1976年、東京・渋谷にマリオンクレープが開店した。クレープを専用の巻紙に包んで提供し、手に持って食べるスタイルを定着させた。果物や生クリーム、アイスクリームなどを包んだ日本独自のクレープはファーストフード的要素も備えていると言える。この「原宿風」あるいは「日本風」と呼ばれるクレープは中国やカンボジアなどにも広がっている。1980年代の原宿を舞台に展開される甘酸っぱくも本格的な青春タイムトラベルとり・みき氏の「クレープを二度食えば」を思い出した。

*シンパロディ:クレープ・サウンズ

 モノリスは筆者をこの世界と並行して存在するパラレルワールドに連れて行ってくれる。3月(2024年)に亡くなった偉大なマンガ家・鳥山明氏の「Dr.スランプ」に登場する「パーザン」は「ターザン」のパロディである。これらに沿った面白い例を紹介しよう。

 

 クレープ・サウンズはグループ全員がクレープのお面をつけているエレキバンドである。演奏は「♪森・トンカツ・泉・ニンニク・囲~まれ・テンプラ」と食べ物の歌が多い。ギターの先でクレープを回転させて、客席に投げ込む技に人気がある。

*食品なんでも相談所 横山技術士事務所

*3頁目 発酵食品もの知り講座

*4頁目 大豆総合研究所

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*吉祥寺サバイバル 吉祥寺サバイバル 目次

*働くヒト器官 働くヒト器官 目次