今回は、
保険請求が一部切られた。
再請求するも認められず。
病院が国保側に裁判。
というテーマで過去の裁判例を解説します。
数回に分けて
解説をしていきたいと思います
今回は、
実際にあった裁判例を紹介した上で、
その概要について、解説をしていきます。
今回取り上げる裁判例は、
前回の記事でも触れた、
【保険診療の診療報酬請求】
関しての記事です。
病院側が、
国民健康保険側に対して、
診療報酬請求の裁判を起こした事例
です。
【前回の記事】
今回の記事では、
この裁判例の概要と、
裁判で争われた中で大きな点(争点)
を挙げます
次回以降の記事では、
実際の争点の具体的な解説と、
これに対する、
裁判所の具体的な判断を見ていきながら、
解説を加えていきます
事案(事例)の内容
✔️ 裁判例
横浜地裁平成15年2月26日判決
(判例時報1828号81頁)
✔️ 事案の概要
X1医師は、
そのX1医師が経営するクリニック
(X2クリニック)で、
人工透析を患者に対して行なっていた。
X1医師は、
各患者に対して、
腎性貧血の改善治療を目的として、
エリスロポエチン製剤
(販売名エスポー注射液)
を投与していた。
X1医師は、
これらの投与に基づいて、
保険診療のY審査支払機関に対して、
診療報酬の支払を請求した。
この請求に対して、
Y審査支払機関は、
X1医師の各請求のうち、
一部は認めたものの、
その他の部分は、
「減額査定」として、
支払いを拒否した。
Y審査支払機関が支払を拒否した理由は、
減額査定の基準のうちの、
「過剰と認められるもの」
または
「その他不適当または不必要と認められるもの」
に該当するという理由だった。
その後、
このような減額査定を不服として、
X医師は「再審査請求」を行い、
Y審査支払機関に、
1回目の申請の際に拒否されたうちの一部は増額査定として請求が認められたが、
減額査定が維持された部分も残った。
(再審査請求をしても、
一部は保険が通らなかった)
X1医師はこれらの支払拒否に対し、
Y審査支払機関に対して、
未払いの診療報酬約260万円と、
慰謝料50万円を請求する、
裁判を提起した。
※当事者を示すアルファベットは実際のイニシャルなどとは全く無関係に記載しています。


今回の裁判のキーワード
保険診療で、
報酬請求が認められる範囲とは
今回の裁判の争点
今回の裁判では、
以下の2点が、
争点となり、
争いのポイントとなりました
⑴ 適正な療養の給付だったか
(医療行為として、
過剰・不適切ではなかったかどうか)
⑵ 慰謝料の請求について
⑴ 「適正な療養の給付(医療行為)」
裁判所は、
X1医師の行なった薬剤の投与が適正な療養の給付(医療行為)に当たるかどうか
で判断する、としました
そうすると、
「適正な療養の給付(医療行為)」
とは何か
ということになりますね。
そこで、さらに具体的に検討する必要があるのですが、
これ以降の点については、
具体的に次回の記事で解説します
⑵ 慰謝料の請求について
2つ目の争点になったのは、
X1医師が主張した、
慰謝料(精神的損害)
が認められるかどうか、という点です。
X1医師は、
本来、保険で認められるはずの、
添付文書に従った薬剤の投与が、
Yから診療報酬の拒否をされたことで、
正当な診療報酬を受け取ることができなかっただけでなく、
そのことにより、
その他の患者に対する適切な医療行為が、
経済的側面から制限されて、
極めて深刻な精神的苦痛を受けた、
と主張して、
慰謝料として50万円
の請求をしました。
この点についても、
裁判所が具体的にどのような判断をしたのかは、
別の記事で解説をします




【筆者弁護士、事務所情報】
〒150-0044 東京都渋谷区円山町6-7 渋谷アムフラット1階
甲リーガル法律事務所(きのえりーがるほうりつじむしょ)
代表弁護士 甲野裕大
TEL:03-6416-1595(代表)
LINE経由でのお問い合わせはこちら
【ご注意】
当ブログに記載されている内容はあくまでも筆者個人の見解であり、全てのケースに必ず当てはまるものではありません。
ケースごとに色々な事情があり、最終的に判断するのは裁判所であることはご留意ください。
したがって、実際のケースでお困りの際には、当ブログの内容をそのまま鵜呑みにするのではなく、弁護士に相談されることをお勧めします。
また、当ブログの内容、テキスト、画像等にかかる著作権等の権利は、すべて筆者及び当事務所に帰属します。
当ブログのテキスト、画像等の無断転載・無断使用を行うことを固く禁じます。