今回は前回に引き続き、
離婚分野の「不倫」について、
解説していきます。
不倫を職場に通報・さらすと
犯罪になる?
訴えられて不利になる?
【第1回の記事】
【前回の記事】
※なお、別途注意すべき点として、
プライバシー侵害の点があります。
別で解説します。
職場の1人だけ(特定の第三者)に、
本当に留まるのであれば、
不特定多数ではない、として、
名誉毀損が成立する可能性は低い。
一方で、
「不特定多数の第三者に伝わる可能性」
があるのであれば、
たとえ、1人にしか伝えてなくても、
不特定多数の第三者に、
伝わる可能性のある行為をした、
ということで名誉毀損が
成立する。
これを「伝播可能性」と言います。
【前々回からのおさらい】
名誉毀損とは ![]()
✔️ 人の社会的評価を、
下げるような内容を、
不特定多数の第三者に
伝わる可能性がある行為をすること
✔️ 民事上の責任(「慰謝料」の支払い)と、
刑事上の責任(犯罪行為)
それぞれに該当します。
✔️ 刑事上の責任の内容は以下。
” 3年以下の懲役もしくは禁錮
または
50万円以下の罰金 “
法定刑で定められています。
(刑法第230条)
今回の内容 ![]()
名誉毀損には、
上記のような名誉毀損の条件に該当する行為でも、
さらに一定の条件を満たせば名誉毀損に該当しない場合がある、
という例外規定があります。
これを、
「違法性阻却事由」
と言いますが、
この点について解説していきたいと思います。
今回の解説のキーワード
「違法性阻却事由」
名誉毀損の違法性阻却事由![]()
以下の①から③の条件を全て満たす場合は、名誉毀損は成立しない。
(※③は、③−1か③−2か、どちらか一方)
①公共の利害に関する事実に係ること(公共性)
②専ら公益を図る目的に出たこと(公益目的)
③-1摘示された事実が真実であると証明されること(真実性)
又は
③-2加害者において摘示した事実が真実であると信ずるについて相当の理由があること(真実相当性)
違法性阻却事由の具体例![]()
これらの要件は、判例、裁判例でその具体的な事案や、
判断基準などが示されてきていますが、
裁判例を掲載すると長くなってしまうため、
ここでは、
違法性阻却事由に該当する具体的な「例」を挙げて、
イメージしてみます。
まず、①「公共性」
というのは、
私的な出来事ではなく、社会一般、世間一般にとって、
有益なことだったり、
世間一般に知らせておく意義があること、
を指します。
例えば、世間一般で認知されている有名政治家の「汚職(ワイロなど)」については、
世間一般の関心事であり、
国民がどの政治家を国会議員に選ぶかという判断にも関係するなど、
この事実を報道することは、世間一般にとって意義のあること、
ということができるのが通常でしょう。
一方で、
世間一般に認知されていない一般人の「不倫」の事実の暴露は、
世間一般の大多数の人にとっては、なんら意義のある事実や有益なことではないため、
通常は、この「公共性」がない、
と判断されます。
次に、②「公益目的」ですが、
簡単に言えば、
「私怨」(個人的な復讐目的など)は認められない、
ということです。
世間一般に有益な事実を、
世間一般に広く周知して議論を深めようといった目的を図る報道であれば良いのですが、
私的な目的(復讐目的や制裁目的)といったものが入っていると、
この「公益目的」の要件に該当しない、
ということです。
最後に、③の「真実性」または「真実相当性」ですが、
これは文字通り、内容が真実である証明ができたり、
その証明ができなかったとしても、真実であると誤解するような十分な裏付けがあれば良い、
ということです。
つまり、十分な「証拠」「裏付け」がない状態で、
何かを暴露すると、
それが、たとえ、公共の利害に該当する内容で、交易目的であったとしても、
名誉毀損になってしまう可能性があります。
以上の内容は、複雑で難しい内容だと思いますので、
とりあえずは、
この3つの条件を全て満たすには相当ハードルが高い![]()
ということだけ押さえておけば、問題ありません。
(例外が認められて、名誉毀損が否定されることは多くないということです。)
そして、
夫の不倫を職場に通報することについては、
上記の条件を満たすことは、まず考えられません。
なので、
結局、夫の不倫を職場に通報することは、
それが不特定多数の第三者に伝わる可能性がある行為であれば、
名誉毀損に該当する可能性が高い、
ということになります。
よく、ご相談などで、
夫の職場に通報することは可能か、
というような内容のご質問をいただくことがあるのですが、
以上の通り、
夫の職場に不倫の事実を通報することは、
名誉毀損に該当する可能性があることから、
筆者はいつも、
「名誉毀損に該当して刑事処罰される可能性すらあるため、
弁護士の立場としてはお勧めできません。」
と伝えています。
不倫をされた妻側からすれば、
夫や、不倫相手に対して、
許せない気持ちがあることは当然で、
社会的制裁を受けさせたい、
という気持ちがあることも、
とてもよく理解できます。
ただ、弁護士としては、
上記のような違法な行為になる可能性がある限り、
これを勧めたり、または、問題ないかのように伝えることは、
決してやってはいけないのです。
弁護士がお手伝いできるのは、
あくまでも、法的な手段で、
夫側や不倫相手側に損害賠償(慰謝料)を請求したり、
あるいは、
謝罪やその他の条件を相手に応じさせるよう交渉をする、
といったことです。
そのような許せないお気持ちを、
弁護士を依頼するという方法で、
法的な手段を使って解決するのかどうか、
ということをご相談者と話し合い、
ご相談者の希望に沿うのが、
弁護士に依頼して法的請求をすることなのかどうか、
をしっかりと確認することが必要だと感じています。
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