今回は、
【医療過誤になる基準は?
病院側が気をつけたいポイント】
を解説します。
医療過誤とは ![]()
✔️医療過誤
→医療機関側の人為的ミスを原因とするもの。
医療従事者が必要な注意を払って
必要な対応を講じていれば防ぐことができたケースを、「医療過誤」と言います。
✔️「医療事故」とは異なる
✔️「医療事故」の方が
広い概念
→「医療事故」は、
それが人為的なミスによるものか否かは関係なく、人為的なミスではなく、
医療機関側に法的な責任が無いと判断されるケースの事故も含めた概念とされるのが一般的。
今回は、医療過誤に関する解説です。
医療機関側、医師側に責任の有無の判断基準とされるのは、
患者側に生じた「損害」に対して、医師の診療行為が、
「診療当時のいわゆる臨床医学の実践における医療水準」
を満たしているかどうか、
が基準となるとされています(※1)。
誤解を恐れずに、簡単に表現すると、
研究(基礎)ではなく、
実際の臨床の現場で、「一般的」とされる水準の医療を提供しているかどうか、
がポイントになるという事です。
その後の最高裁判所の出したいくつかの判例(※2)により、基準の整理が進み、
現在では、
医師の注意義務の基準となる医療水準は、全国一律なものではなく、
①医師の専門分野
②医療機関の性格
③所在地域の医療環境の特性
などの諸般の事情を考慮して決められるという見解が一般的となっています。
これを具体的に不妊治療の現場に当てはめると、
不妊治療クリニックや産婦人科の現場において、
先進医療や、最新の医学知識や論文に基づいた医療水準が基準になることはほとんどないかと思います。
一方、例えば、日本生殖医学会が刊行している、「生殖医療ガイドライン」といったガイドラインに記載されている内容は、
十分注意して参照しておくべき、ということになります。
ただし、ガイドラインは法律や法令ではありませんので、
「ガイドライン通りの診療を行っていれば責任を問われることはない」
ということは【必ずしも保証されないこと】に注意が必要です。
また、ガイドラインに則っていない診療は医療過誤になる、ということでもありません。
ガイドラインに記載していない内容などについては、それぞれの医師の判断と責任の下で行われるものです。
最も、ガイドラインなどの、厚労省、医師会、学会などの団体が刊行している文献や基準は、
病院としては押さえておくべきでしょう。
(何かあった際に、ガイドライン等に従った診療になっていたかどうかが、
裁判所で判断される重要な要素の1つになることは間違いないため。)
気をつけたいのは、上記の「医療水準」というのが、
いわゆる「医療慣行」(今までこうしてきていたという慣例)では無い
ことです。
今までの方法でこうしてきていたからこれで問題ない、というわけではなく、
その方法が、直近の業界の動向で問題視されていないか、各種団体からの注意喚起などが出されていないかなど、
最新の情報はチェックしておく必要があります。
今回は、医療過誤の判断基準として、全体的な診療の基準について説明しましたが、
実際には、具体的に、例えば、問診に関する注意義務、検査に関する注意義務、転医に関する注意義務、
など個別に裁判で争われてきている例があります。
本ブログでもこれらの義務について解説することがあるかもしれませんが、
病院としては、
体制やマニュアルなどを作成、改善する際には、
医療問題に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。
事前の予防が、
実際に医療事故が発生した際の病院の責任の有無を分けることにもつながることもあります。
最後に、下記に医療過誤と判断されるケースでの、
医療機関や医師の責任三種類を記載しました。
医療機関、医師側の責任の種類![]()
✔️民事上の責任(不法行為)
→損害賠償責任として、患者に生じた損害(治療費、逸失利益、休業補償、慰謝料など)を補填する責任
✔️刑事上の責任(刑事罰)
→業務上過失致死罪、業務上過失致傷などの刑事罰
業務上過失致死傷罪の法定刑は、5年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金
✔️行政上の責任(行政処分)
→罰金以上の刑罰になった場合は、医師法により、戒告処分、3年以内の医業の停止、免許取り消しの処分になる可能性あり
【文中の注記】
※1:最三小判昭和57年3月30日判時1039号66頁という最高裁の判決
※2:最三小判平成7年5月30日判時1553号78頁,最三小判平成8年1月23日民集50巻1号1頁など
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ケースごとに色々な事情があり、最終的に判断するのは裁判所であることはご留意ください。
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