建築家の設計ブログ -2211ページ目

月光の美

月光の美


世の中

「陽」の美もあれば、「陰」の美もある。


鹿苑時 通称:金閣寺が「陽」とすると

慈照寺 通称:銀閣寺が「陰」である。


日本の庭園、寺院は どちらかと言えば

「陰」が多いから 「陽」の金閣寺は珍しいと見た方がいい。

銀閣寺は 月の光を デザインに取り入れた

興味深い建築である。


山荘の中に海、島といった様々な要素

むしろ矛盾した要素で構成された銀閣寺であるが

中でも不思議なものが二つある。


一つは 「向月台」。

高さ 約1800mm 見た目は 富士山のミニチュア。

二つは 「銀沙灘」。

高さ 約600mm の砂盛りである。 

いずれにしても 細かい白砂でつくられた枯山水。


実は 「向月台」と「銀沙灘」は江戸時代になってからの

後付けである。

何故 このようなものがつくられたのかよく分からない。

色々諸説あるが、ホントは誰も知らないのである。


しかし、他の「枯山水」と決定的に異なるのは

細かい粒の「白砂」である。

石英質の多い白砂は、蒼白く降り注ぐ月の光を受けて白く輝く。


銀閣寺の枯山水は砂の性質を巧みに利用した「

照明装置」といえよう。

月待山から昇る月、その月から降り注ぐ蒼白い光は

銀閣を銀色に塗り替える


また、銀閣寺で歴史的に重要なのは

「花壇」であることはほとんど知られていない。

「花壇」はもともと「花段」として室町時代に登場する。


その室町文化の貴重な遺構ともいえる「花壇」は

珍しい花を鑑賞する為の最新装置として設えてある。

義政が如何に花を好んだかが窺える。


月明かりのもと蒼い静寂な世界は

和歌を詠じ月に酔い花を愛する」ことを

理想とした義政の「心の理想郷」だったのかもしれない。