■ファースト・インプレッション!



Artist : The Flower Kings

Title : By Royal Decree

Year : 2022

Format: 2CD / 3LP+2CD / Digital


フラワーキングスの15枚目のスタジオアルバム「By Royal Decree」がリリースされました。

日本盤も34日にリリースされます(ソニーレコード)


アルバムは20217月にスウェーデンのフェニックススタジオ(トランスアトランティックが20199月に「The Absolute Universe」を録音した場所)で録音され、同年の9月〜10月にかけてロイネ・ストルトのスタジオ「コズミック・ロッジ」でミックスされました。

今回は前作「アイランズ」とは異なり、リモート制作ではありません。



録音メンバーは、

Waiting For Miracles」(2019)以降の5

Roine Stolt [Vo / Gtr]

Hasse Fröberg [Vo / Gtr]

Zach Kamins [Keys]

Jonas Reingold [Bass]

Mirrko Demaio [Drums]

に加えて、ロイネの実弟のMichael Stolt(オリジナルメンバー)が加わり、Jonasとベースを分け合ってます。

1曲のみリンドバーグがベースを演奏)

Roine Stolt

with Gibson ES 175 - cherry 1966


ゲストミュージシャンとして

Hasse Bruniusson(但し昔からメンバー扱い

[Percussion]

Jonas Lindburg [Bass]

Rob Townsend [Sax]

Aliaksandr Yasinski [Accordion]

Jannica Lund [Backing Vocals]

が加わっています。


ジョナス・レインゴールドはベースとフレットレス・ベース、マイケルはベースとシンセベースを弾き分けており、またマイケルはバッキングヴォーカルでも参加しています。

3月から始まるツアーではジョナスがスティーヴ・ハケットのツアー参加で不在のため、マイケルが久々に復帰して参加します。

(ジョナスが将来的に復帰するのかは不明、というより未定なのでしょうね)


Michael StoltとJonas Reingold


完成したアルバムは前作よりオールドTFKに先祖返りしたサウンドになっています。

これは 前作「アイランズ」ではトランスアトランティック用に書いた曲が多く、またリモートで制作されたこともあるかもしれません。

そしてロイネが 最新インタビューで語っているように、古いマテリアルを使い、さらにバンドのアイデンティティを求めて音作りをしたからではないかと思います。

彼の言葉を借りると「民族(フォーク)音楽的」で「スウェーデンの調性(tonality)」を備えているということになります。

もちろんロックの息吹も感じられ、聴いてみると懐かしいフラワーキングスが帰って来たような安心感が感じられました。


また今回はロイネがリードボーカルを取る曲がすごく増えています。

彼のギターとヴォーカルをこよなく愛する自分には朗報です。

でもハッセは少しストレスが溜まったかな。

それともHFMCの新作で自作品はたくさん録音したから、ハッセの作品が少なめだっただけかもしれません。


3作目にしてザックとミルコがかなりバンドに馴染んできたのも感じました。

きっとファンもこのアルバムを高く評価するのではないでしょうか。


Disc 1

01. The Great Pretender06:55

ハッセのヴォーカルで力強く始まる曲。

元曲は1991年に書いたものだそうです。

ベースはレインゴールド。

ロイネがキーボードとパーカッションをオーバーダブしています。

中間部のロイネのヴォーカルを挟んで終盤の展開やギターはTFKらしいサウンドです。

■The Great Pretenderビデオ

Hasse Fröberg



02. World Gone Crazy05:04

これも古い素材だそうです。

マイケルがベース。

ジャニカ(ヤニカ)さんとマイケルがバッキングボーカル。ブルニウソンがパーカッションで参加しています。

この曲も実にTFKらしいサウンド。

中間部からやはりロイネのヴォーカルあり。

それに続くギターソロとコーラスが魅力的。

ザックがミニムーグでソロを弾いています。

コーラスワークは往年のTFKを思い起こします。

Hasse Bruniusson



03. Blinded07:45

1999年の「フラワーパワー」の頃書いた曲がベース。

少し長めのイントロからロイネがリードボーカル。

前半のリズムはTA5The Absolute Universe)の「Owl Howl」みたい。

レインゴールドがベース。

ロブ・タウンゼントがサックスをプレイしています。

終盤は昔のようにシンフォニックな展開に。

Rob Townsend

Familyに居た英国人ドラマーとは同名異人です。



04. A Million Stars07:11

セカンドシングルになった曲。

これもロイネのリードヴォーカルの曲です。

どことなくTA5の「Lonesome Rebel」と共通する香りがあります。

ベースはマイケルで、ジャニカさんがバッキングを歌っています。

終盤は穏やかに美しく、そしてギターの調べとともにエンディングへ。

ロイネ・ストルトの魅力が詰まった曲です。

■A Millions Starsビデオ



05. The Soldier (05:23) 

トランスアトランティック用に書いた素材だったそうです。

マイケルがベース。

ザックのハモンドで始まります。

これもロイネのリードヴォーカルの曲です。

マイケルとジャニカさんがBV

この二人がセットのBVの曲が多いです。

途中でハッセのヴォーカル部があってインストパートへ。

ロイネの心地よいギターとザックのハモンドのコンビネーションが聴けます。

ギターの背景でのミルコのドラムスとパーカッションが面白い。

ロイネのヴォーカルとギターでエンディングへ。



06. The Darkness In You (05:13) 

マイケルがベース。

バッキングボーカルもマイケルとジャニカのペア。

この曲もロイネの郷愁的なヴォーカルとギターでスタートします。

ザックのハモンドもよく聞こえます。

ロイネの珍しく深いトーンのギターソロ。

この曲は新しいパターンでのTFKの美しい曲です。

Jannica Lund



07. We Can Make It Work (02:48) 

これも以前トランスアトランティックにオファーした曲でロイネのリードヴォーカル曲。

レインゴールドのベースでマイケル&ジャニカのBV

軽快なリズムの楽しい曲。

ロイネが書いたポップソングかな。



08. Peacock On Parade (05:15) 

ベースはレインゴールド。

ハッセ抜きの4人で演奏しています。

短いロイネのヴォーカルはありますが、ほぼインスト曲。

ザックのハモンドが大活躍しています。

ミルコのリズムも心地よいです。

こういう曲は昔はありませんでしたね。

新しいTFKを主張しているカッコいい曲です。クレジットはないけどエンディングで女性ヴォーカルが聞こえますがシンセかな?

Mirkko Demaio

「この曲をニール・パートに捧げる」との

ミルコの献辞がありました。



09. Revolution (05:59) 

サードシングルになった曲。

この曲の一部も1999年に書かれたものだそうです。

ザックのキーボードがトマスのプレイを思い出させます。

フレーズがスウェーディッシュ・フォークっぽいです。初来日の時にトマスが演奏したトラッドソングを思い出しました。

ギターとキーボードで進行。

ジョナス・リンドバーグがベース参加している曲です。

中間部でハッセのヴォーカルが聴けます。

マイケルがバッキング・ボーカルだけで参加しています。

この曲もやはり後半からロイネのギターが堪能できますね。

終盤でロイネが「A Million Stars」のパーツを歌います。

シンフォニックなエンディングが良いです。

■ Revolutionビデオ

Jonas Lindberg 

彼の新作にロイネが参加しています



Disc 2

01. Time The Great Healer (06:12) 

マイケルがベース。

ジャニカさんがBV

ロイネのヴォーカルで始まります。

今回はほんとによく歌っています。

本作ではザックのキーボードがバンドサウンドにとても馴染んでいます。

少しSEなども使っているところは「フラワーパワー」みたいですね。

気持ちよくギターを弾いて気持ちよく歌ってますね。



02. Letter (02:25) 

ロイネのヴォーカル。

レインゴールドがベース。

ブル二ウソンのパーカッションとヤシンスキのアコーディオンをフィーチャー。

このようなサウンドがスウェーデンの民族音楽(フォーク)っぽいところでしょうかね。

Aliaksandr Yasinski 



03. Evolution (04:47) 

ザックのキーボードで始まるインスト曲。

ロイネ、ザック、ミルコそしてレインゴールドの4人だけで演奏しています。

ミルコのハイトーンのドラムスが小気味良いです。

このようなフュージョン&ジャジーな演奏もいいですね。

ギターもキーボードも心地よい。



04. Silent Ways (05:01) 

ハッセのリードヴォーカル曲です。

レインゴールドのベースとジャニカさんのバッキングヴォーカル

ロイネはガットギター(ナイロン弦)も弾いています。

フォーキーな曲です。

新しい曲ですが、たしかに昔のTFKはフォーキーな曲もありましたね。

しかしエレキギターのソロは忘れません。



05. Moth (04:31) 

レインゴールドがフレットレスベース。

ロイネのリードヴォーカル曲です。

ハッセがいない4人で演奏しています。

ザックがグランドピアノを弾いています。

珍しくクラシカルでオーケストラルな(オーケストラは使っていませんが)美しくドラマチックな曲です。クワイアはザックがキーボードで入れています。




06. The Big Funk (04:39) 

サステインの効いたギターで始まる曲。

ロイネのヴォーカル。

マイケルがベース。

マイケル&ジャニカのBV

短いけどTFKサウンドが詰まっています。

この曲なんかも新しいサウンドではないかと思います。

アルバム「Waiting For Miracles」のときも新しいTFKサウンドだと思ったんですけどね。

また新しい魅力のサウンドを創り出してくれました。



07. Open Your Heart (05:17) 

ロイネのヴォーカルです。

レインゴールドのべースでマイケル&ジャニカペアのBV

ヴォーカルもギターも好みです。



08. Shrine (01:08) 

ザックの美しいアコースティック・ピアノソロです。

短いけど、これも新しい構成ですね。

ステージでソロコーナーやったらかっこいいかも。

Zach Kamins



09. Funeral Pyres (07:14) 

アルバムのエンディングを飾る曲。ロイネのエモーショナルなギターが聴けます。

リードヴォーカルはハッセ。

ベースはマイケル。

例によってBVはマイケルとジャニカさん。

終盤のテンポがかわる構成もよいです。

おなじみのTFKサウンドです。

静かなエンディングで終了。



好作品だと思います。

DISC ONEは古いマテリアルを使った懐かしいTFKサウンドの曲が多く、DISC TWOは新しいTFKサウンドを提示した曲が多い印象を受けました。

でもどちらも魅力的です。

前作も悪くはなかった(日本盤も買いましたし)のですが、個人的には前作より気に入りました。

やはりスタジオに会して制作したほうがよい作品ができるんじゃないでしょうかね。

懐かしいTFKのサウンドも多いので、古くからのファンも満足する仕上がりになっているのじゃないでしょうか。

欲を言えば、1曲くらい20分超えの長尺な曲を作ってくれれば完璧なんですけどね(笑)



ウクライナに祈りを

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