金持ちのような顔をして過ごしているがどうしようもない。祖父の万右衛門の三十三回忌になったので、法事をしようとした。万右衛門が生きていた頃は仲が良かった人で生き残りの八右衛門という老人を上客に、その場を繕う見てくれだけの料理を出して、その日の追善と読経が終わった。茶飲み話をしながら万太郎は上客に向かって言った。

 

「八右衛門様、お聞きください。この度は祖父の万右衛門の法事のために天井を貼り替えました。ご覧ください。この薩摩杉は一坪六十五両です。」

 

八右衛門は顔をしかめて言った。

 

「はあ、それはお手柄でございますな。」

 

「私も祖父のことでございますので、格別にしようと思いまして、そこで仏壇を修繕しましてちょうど十三両かかりました。」

 

「はあ、それはお手柄。」

 

「そしてこの襖も下地が見苦しいので、仏への準備ということで、全て貼り替えました。これで七八両ぐらいでしょうか。これは岸先生の絵でございます。」

 

「はあ、お手柄ですな。」

 

「雪隠から廊下までの修繕に五百目ぐらいかかりました。」

 

「はあ、お手柄。」

 

「このまた掛け軸はご覧の通り元信の三笑中縁大縁の切は、すぐには手に入らない一品で、かれこれ二十両ほどかかりました。

「はあお手柄」

 

と八右衛門は万太郎が言う事に、何も付け加えずただお手柄と誉めるだけであった。

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バブルのときはこういう人がいっぱいいましたねぇ。6畳一間のアパート住まいなのに大借金してベンツを買ってみたり、実にアホなことをした人がいました。エグゼクティブナンタラと称して、学生の分際でクレジットカードで20万円使ってみたり、あの当時のガキどもはどうしているのでしょう。生きてるんですかねぇ。

 

恵比寿屋さんはそんなバブルの時代でも別世界(別に刑務所ではない)で生きていたので、そういう生活をしたことがありませんでした。ちっとはそういう生活もしてみたいとは思ったこともありましたが、どうも性分に合わずやりませんでした。そのおかげで今がある感じです。