高い地位に上って、多額の禄を貰う者は人に敬われ尊ばれる。富裕であるのも父祖の徳が原因なので、自分一代では辛い目に遭わないだろう。だが、心無いことをして、子孫を苦しませることをする人は多い。平清盛[1]がまさにこれである。北条時政[2]も先祖の善い行いで鎌倉の執権となり、その子供の義時[3]は勢いに任せて徳を破るようなことをしたが、泰時[4]や時頼[5]という徳を持った人がいたので、徳を積み立ててきた。その積み立ててきたので九代も栄華を保てた。

 

清盛は大悪党であったので、その子供の小松内府は多く徳を積んだが足りなくて滅ぼされた。内府の徳によって栄華を得る者もいるにはいた。

 

出生して高い地位に上ろうと思う人は全て人を恵み、行いを正しくして、大徳を積んで子孫の幸いの種を撒いておきなさい。

そういうことをしなければ、墓も荒れ果てて墓参りに来る人すらいなくなるだろう。

 


[1] 平 清盛(たいら の きよもり:永久6年(1118)―治承5年(1181))

[2] 北条 時政(ほうじょう ときまさ:保延4年(1138)―建保3年(1215))は、平安時代末期から鎌倉時代初期の日本の武将。鎌倉幕府初代執権。

[3] 北条 義時(ほうじょう よしとき、長寛元年(1163年)―元仁元年(1224年))は、鎌倉幕府の第2代執権。

[4] 北条 泰時(ほうじょう やすとき:寿永2年(1183)―仁治3年(1242)は、鎌倉幕府第3代執権

[5] 北条 時頼(ほうじょう ときより:嘉禄3年(1227)―弘長3年(1263))は、鎌倉時代中期の鎌倉幕府第5代執権である。

 

この点は日本的だなと思います。上に立つほど徳が高くなければならないという考え方です。ロシアは唯物史観から抜けられず、人格なんかどうでもいいと考える傾向があります。プーチンなんかは、人の上に立つには恐怖心が重要とすら言っています。忠吾幾の徳は、誰に対するものかというと血縁関係にある人が第一で、その次が友人です。だから、縁もゆかりもなければ、本当に雑な扱いをします。

 

例えば戦いをするとき、将官クラスが異常粘着だったりすれば負けが込んでも全滅するまでやりかねません。今まさにそんな感じですが。