も 元手銀 あるだけ物を 買わぬよう 少し用意に 残しおくべし

せ 世間をば 広う付き合へ 憎まれて 売り先狭く 行かぬよう

す 末々の 立身出世 的にして やたけ心に 励め商ひ

京 京田舎 土地は変われど 商ひの その駆け引き 変わり目は無し

 

天保十三[1]壬寅年十月

御免 作者 大和屋圭蔵

 

売弘書林 大坂心斎橋通ばくらう町角

伊丹屋善兵衛

 

板元書林 同斎橋通ばくらう町北へ入

塩屋喜兵衛

 


[1] 西暦1831年

 

「も」は、今回の武漢ウィルスで思いっきり感じたでしょう。特に在庫回転率の悪い業種では、目一杯仕入れて現金が回らず大変な目に遭ったと思います。よく言われるのは、3ヶ月から半年、全く売り上げが無くなってもやって行けるくらいの現金は持っていた方がいいと言われました。まさにその通りです。

 

株でもそうですが、今安いからと目一杯買うと底割れすることがあって、本当に大変な目に遭いますよ。

 

「せ」は、これは勤め人でもそうです。会社の中だけ、取引先とだけしか付き合いがない人がいますが、危険ですよ。さっさと会社から帰ってきて、近所の人や同じ趣味の人、異業種交流会に行って自分を磨いた方がいいです。思考が固まりますからね。

 

恵比寿屋さんも、働き始めるころからこの点について注意してきました。なんか調子が悪いと思うと、仕事以外の人に合うようにしています。必ず、当事者の視点では気づかないことに気づかされますから。

 

ということで、このシリーズもこれで終わりです。