売り買いに限らず世界の事は全て現銀であるべきで、夜が明ければ現銀に日が出て、日が暮れれば現銀の星が現れ、十五夜になれば現銀に月に満ち、十六夜になれば現銀が月から欠けて行き、風が悪ければ現銀に雨が降る。風がよければ現銀は晴になり、春になれば現銀に花が咲き、秋になれば紅葉するのを見なさい。人間でいっても食事をすれば現銀で腹が膨れ、酒を飲めば現銀に酔い、大食大酒すれば現銀が病気になり、食べるのを養生し薬を飲めば現銀が病を治し、火を起こせば現銀から火がでて、水をかければ火が収まる。

 

主人に忠義、親に孝行をすればお上よりご褒美を賜る。善い事をすれば、良いことが現銀になる。

 

もし御法度に背き掟を破ればたちまちお咎めを受けることになる。悪しきことをすれば悪しきことが現銀に影響がくる。

神を祈るにも仏を念ずるにも、信心が通じれば現銀にその利益がある。

『曾子』のいわゆる「己に出者は己に帰る」とあるのも、釈迦がおっしゃった因果覿面[1]も俗っぽく言えば現銀である。となると世界の神羅万象は現銀に他ならない。

 

この理屈を分かって振舞い、人に物を貰ったらこちらは現銀でお礼をするのがよい。物を貰っても、振舞われてもそのままにしておいて忘れて何もしないのは、現銀理屈に反するので親しき中でも疎遠になっていく。現銀をひたすら早く返礼するに越したことはない。

 


[1] 悪事の報いとしての悪い結果がすぐに目の前に現れること。

 

 

今日の部分は、間奏みたいな感じですね。

 

実は現金主義は、日本に限らずドイツもそんなところがあるらしいです。ドイツは、インフレを極度に嫌う傾向があり、財政関係もガチガチにします。

 

それは国家だけではなく、個人もそんな感じでクレジットカードはなかなか普及しなかったようです。

 

やはり残金がどのくらいあるのか、わからない状態で買い物をするのは基本的に怖いですからね。そういえば一時流行ったデビッドカードはどうなっているのでしょう???まだあるのかな。少なくとも恵比寿屋さんの生活圏では見ませんね。