人によっては物を現銀で買うのは損である。掛けで買えるだけ買って、支払い時期になって半分か七割ほど払って、最終的には古掛といって少しずつ支払って、二年三年経てば三割ぐらいの扱いになって、帳簿から除却するのは簡単である。ならば、現銀で買うより利益が大きくなるという人がいるが、実にとんでもない話である。こんな事されたら商人は立ち行かなくなってしまうではないか。お年玉からお歳暮迄配ってお得意先を奉ってきたのは何のためか。取引をして僅かながらの手数料を貰うからこそはなたれのわんぱく者まで、おぼっちゃま、お嬢様とヨイショして金を出しているではないか。だから、元手を減らす位支払い、残りは古掛といって貸し倒れにするなどというのは、この上ない不人情である。

 

緊急の支出があっても、次の節季は右もなく左もなく支払うのが人間というものだ。大小関係なく人に損をかけるほど罪深いことはない。他人に損をさせれば自分も他人に損をかけられるのは決まったことで、だからこそ現銀取引が良いのだ。

 

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この当時の会計制度は分かりませんが、貸倒引当金のことを言ってるのかなという気がします。数年に渉って回収ができないとなると、徐々に費用として計上して売掛金を少しずつ減らして、最後は帳消しにする方法です。これはあくまでも売った側の会計処理であって、買った側はきちんと払わなきゃならんのです。

 

借りた金はしっかり返しましょう。買掛金はこれは借金ですから。

 

但し、これも現在は良し悪しで、しっかりと倒産手続きをしてくれれば費用控除の対象になるので、いつまでも返す返すと言い続けて返してくれえない方が結構大変だったりします。売った側が利益が出ているときに破綻処理してくれればいいのですが、売主が真っ赤かになってからやられると、本当に現金が回らなくなるし、いつまでも資産として残っても不良債権として扱いに困るんですよ。