また、掛け売りにしたら利益が上がるように思えるが、もし予期せぬことが起きたら半分払ってもらって残りは支払い不能と言われ、帳面には半分か良くて七割回収できればまだマシとなり、その後完済してもらうことは希であるだろう。その集めた金では元手にはならず、ましてや通常の支払いはができなくなり、どうしての必要な仕入れに必要な金を回して、やっとやっと支払いに回しにできるうちはまだよい方で、ひどい場合は支払時期に無理して金を工面するようになり、仕入れの未払いはますます増えて借金になりそうになると、みな掛け売りにして、掛けで買うからこうなる。

 

この状態になると、二割三割あるはずだと思っていた利幅が、帳尻合わせで金を拾った夢が覚めたようなものである。

 

そうじて掛け売りする人がはまる油断は、「今日はしっかり儲けた。ならばこの位のぜいたくは悪くないだろう」と、まだ手に入れていない銭をあてにして魚を一匹買い、酒の一升でも飲もうかという気になり、いつしか倹約を忘れるようになり、物をかけで買うようになる知友である。商品を現銀で買わないときは目の前に銭を出さないから、ついうかうかと掛買いが多くなり、支払時期になって支払いの多さに驚き、何でこうなったと調べてみても全て記憶にあることで、今更後悔先に立たず。

 

どうしようもないのに腹立ちまぎれに妻や子供を呼びつけて、呉服の支払いが多いだの小間物支払いが多いだのと、𠮟りつけるのは実にみっともないことだ。

 

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この本は天保13年ですから、西暦1842年、180年前の話です。いつの時代も似たような状態になりますね。

 

今で言ったらクレジットカードで海外旅行に行って、円と外貨の瞬時の判断がつかなくなって買いまくって、帰国した翌月は何十万の支払い、銀行口座にはそれに足りず思わずリボ払いに変更して・・・そうこうしているうちに、遠くに住んでいる親戚が急死して葬式と香典を包んで・・・え?100万円の未払い残金??!!こんな感じでしょう。

 

恵比寿屋さんも就職したての時にクレジットカードを作りました。1%還元という言葉に釣られて作ったのですが、当時は余りクレジットが使える所がないどころか、銀行が勝手にその県以外での支払いに制限をかけてしまったので非常に使い勝手の悪い状態になってしまい、それ以来この手の支払いには慎重になりました。

 

クレジットは1回払いであっても借金ですから。大昔、某政治家が「〇人はクレジットで借金しても、あっけらかんのカー」と言って人種差別だのなんだので国際問題になりそうでしたが、今は日本人がそうなりそうな感じです。幼いうちにクレジットやそのほかの支払い方法についてしっかり教育しておいた方がいいですよ。