三日善事を行うときは、天に伝わり三年間の幸いを下さるという。不善の者は天道からの加護はないだろう。一日不善を行ったものは、禍がなくても、自然と幸いを遠ざけるだろう。三日不善をすると、天は三年の禍を下すという。慎んで善を行うようにして、天道に背くようなことをしてはならない。愚か者は善では上手くいかないというのは大きな過ちで、天地の正しい理に背くものだ。

 

父母に仕え孝行を尽くし慈悲を弁え、驕らずに人を可愛がり、怠ることなくその眞の心を尽くす人は、天地の理屈に適いその家も長く繁栄するだろう。家が長く繁栄して欲しいと望むのであれば、これ以上の事はないだろう。

 

この本をよく読んで、読み聞かせて団結し、もし悪いことがあれば、改めて慎んで神明を恐れ掟を守りなさい。そうすれば、必ず冥利を得て身が安泰となり、子孫が安泰することになろう。

 

嘉永甲寅正月[1]

紀陽[2] 吉本伍篤慎んで記す。

 


[1] 嘉永七年(1854)正月

[2] 現在の和歌山県

 

これで「百姓話訓」は終了です。日本はこういう倫理観があったから、明治維新以降外国の植民地にもならず、大戦後も崩壊せずにやってこれたのだと思います。

 

ただ団塊の世代がぶっ壊し過ぎて、倫理観の欠如からの回復が遅れているのも事実だと思います。早く次の世代が、倫理観を持った経済活動政治活動をやっていただきたいと切に思う次第です。