「その上横目で、いろんな輩が立ち聞きして、いろんな要求をするので、善人がいても悪い話を聞いて、善人を採用するに至らない。大名はそこに注意すべきなのです。」

 

中将はこれをお聞きになって、

 

「道無が言うには、金持ちは卑しいというが、これはその通りだな。東山殿のあまりの驕りが酷い。」

 

性子はこれを聞いて、

 

「昔、唐土も天竺も、善人を好むが結局は上手くいかないのです。上にいる一人の行い次第なので、上の人は慎み深く志があれば、今も昔も上手くいくでしょうに。」

 

道無は

 

「これも昔からそうなんですよね。上の慎みむまでもないことです。まず、世間では人の親に孝行するものは、君主に忠儀があり、友人には誠意があるもの諸芸に深く頃を入れて学ぶものです。どうであれこれは非常に良い例です。例えば少しでも学び足りないことがあれば、その点についての担当者を選び、地頭や奉行所へ申し上げ、人々により俸禄を与えるのがよろしいでしょう。これを地方に命じれば、たとえその心が悪くても、やや不孝な子供がいて不忠であっても、徐々に心はよくなり、必ず賢者が多く出てくるようになるでしょう。黄金好きの世間であれば、欲がある人たちはこの褒美に目がくらんで、最初は時々勤め忠孝も最初は偽のものをやるでしょう。やっているうちに偽が本物になり、善の心になります。」

 

「それは面白い手だね。これだけ人々が金を貪る世の中だから、金に目がくらんで聖賢の世の中になるでしょうな。もっと詳しく続けてくださいな。」

 

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道無が道無でなくなってきましたね。