家事を全て自分で行うのは難しい。畑を耕し、炊事をし、牛馬の世話をして、鶏は朝を告げ、犬は泥棒に吠えて、次に主人の番である。そうは言っても、卑僕は人間に代わるものである。私が卑僕の代わりに働けば、一日で倒れてしまう。この苦労を理解して、丁寧に優しく扱いなさい。

卑僕ももとはと言えば、百姓である。貧乏に追われて自分を頼ってきている。憐れみをかけてやれば、どうして背くことがあろうか。しかし、しばらくの間でも可愛がり過ぎると、それをいいことに暇を盗んで怠けるようになり、油断していると盗みをするようになりかねない。そのときになってはどうしようもない。

 

だから、気を遣ってやりなさい。農業は少しでも怠ってはならない。問題をおこしたら必ず戒めなさい。干渉してはならない。こうしていれば、卑僕は言うこと聞くようになるだろう。

 

主人は恵みを施し忘れることなく、働くことを嫌がらなければ家事にどんな心配があろうか。そのものが我がままであるのを見ると、自分は楽をして卑僕の苦労を顧みず、酒宴にいつまでもいて、俳諧に夜を過ごし、寒い夜に帰ってきては毎晩家の者をたたき起こし、家業を微塵も顧みなければ、下人たちは指示されることも分からず、こんな感じから破産につながっていく者は多い。だからこれを戒めとしなさい。

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本文の「卑僕」は小作人の事でしょうか。

 

この辺りは実に日本的です。イラクに自衛隊を派遣したとき、他の国の軍は金をやるから地元民に作業をさせていました。これに対して、自衛隊は、金をやった上で機械の操作方法などを教え一緒に仕事をしました。その結果仕事の進み具合に大きな差が出た上、自衛隊に帰ってくれるなというデモも起きたそうです。

 

山本五十六の「やってみせ 言って聞かせて させてみて 誉めてやらねば 人は動かじ」と同じです。子供も、生まれてすぐ立って歩いたわけでもなし、うるさいことを言って指示していれば、反抗するか自分で考えなくなるかのどちらかです。よほど人格的に、知能的におかしくない限りは干渉はしない方がいいでしょうね。

 

逆にこれが行き過ぎて、社長がトップセールス状態というのもおかしな話です。また、やらなさすぎて、キャバクラに入りびたりでは従業員は言うことを聞かなくなります。