人はただ上を尊んで、自分はへり下って、神仏を崇めて信じて、有難い時代であると感謝する。主人や親を大切にして、夫婦や兄弟や友人と仲良くする。各自の職業をきちんと詰めて怠らない。人には無理を要求しない。子孫長久のために陰徳をする。慈悲心厚く、目下のものには憐れみをかけて、面倒を見てやる。これ以上の出世鯉はないと思いなさい。

 

思いがけずこの爺さんが長話して、あなたが買い付けて、毎年の東下りや京に上るときの土産としてください。」

 

と大笑いして諭した。

 

この爺さんの丁寧な教訓を有難く人に語り、長く子孫に伝えようと筆に記し、今回の土産はこれに優る土産はないだろうと「千代の家土産」と題を付けた。お読みになる皆さんは、この下手な文章が分かりにくいことを許していただき、あの爺さんの深い話を守って、代々続く出世鯉に至ることを願う。

 

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人の手柄を取りたがる人はいますが、あれって直ぐわかるんですよね。無意識にやっているんでしょうけど、30歳過ぎてそれをやると、思いっきり嫌われますよ。

 

1回目の転職の時もいましたけど、何でもかんでも「俺が」みたいな感じで横取りしていくんですよ。外資系の部長様から転職してきた人でしたが、アメリカではあれが当たり前なんですかね。でも、その上司はよく見ていて話半分で聞いていたようです。

 

管理職は、後輩を育てるのが仕事ですからね。それを分かっていない人は、仕事を辞めたほうがいいですよ。

 

同僚からも徹底的に嫌われていましたが、幹事一人だけで定年退職の時に誰もお別れ会に来ず、実に哀れな最後でした。

 

今日で『出世鯉』は終了です。明日からは、『民家童蒙解』になります。