総じて世間で若い人ほど、直すということの思い違いがあるようだ。どんなことであっても直せるというのは間違いである。例えば、不慮の難に遭う、例えば大風や大地震に遭って、家が倒壊しそうになるときがある。それを直す材木や道具で、腐っていなければ割れたところを新しい木を加えて補強して直せる。もし、古くてどうしようもない家で腐っている状態であれば、それは立て直しようがない。この点をよくわきまえなさい。人の身体も同じである。普段から強引にやっていたのを後から直そうという考えであれば、それは多き間違いであると理解しなさい。人の身体は一息でも怠ってはならない。普段から慎み守って両親の孝行を尽くし、忠義と信用があれば、前に述べたように家はよく保ちなさい。その上天災あるいは病難その他の損失に遭い、商売ができないほどになっても、それをこれまで述べたように心得た主人ならば、ことわざに言う渡世の家財であっても立て直すのに何の特別なことが必要であろうか。天がなせることは更に違うだろう。自分が行うことで乗り越えようとしてはならないというではないか。ただ自分から慎まず身体を破れば、必ず立て直しはできない。と古い老人が言った。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

これにはいろいろ解釈があるとは思いますが、社長交代の話に置き換えてもいいかもしれません。

ある機械メーカーの話ですが、バブル景気が崩壊して売り上げが半分に落ちたことがあったそうです。その当時の社長は何とか取り戻そうとして、健康器具に手を出したそうです。販売ルートは何も考えていなかったようで、ひたすら在庫の山ができ益々大赤字に転落しました。

その会長に退いていた先代の社長と大喧嘩、従業員はビビりまくって退職しまくり、ますます収拾がつかなくなってしまいました。

株主総会で、その当時の社長と交代をもくろんでいるとき、その社長は心臓発作で死んでしまったそうです。

そして先代の社長になったとき、今度は大火事を出してしまい生産が完全に止まりました。借金だけが億単位だけ残り、どうしようもなくなったんですが、専務がここで登場します。

専務が社長になり、全員の雇用を守りながらさらに借金を増やしながらも立て直し、火事から3年後には過去最高益をたたき出しました。

人間は、一度勝つと二度も三度も同じ方法で戦おうとします。世の中が変わってそのビジネスモデルが通じなくて恐れをやり続けようとします。その結果、負けても同じ方法でやってしまい、ここでいう身体直しができない状態になるのです。

こういうのを見ると社長の引き際というのは大切なことなのです。自分が育てたという実績があっての、それで生活している人がいる以上、社長個人の範囲では考えてはいけないのです。