「また古来生まれついての商人が、身分不相応に多くの財産を持っているところ、一両も蔵にはおかず利息を貪るため、金が遅れると急に苦しい目に遭う人が多くいます。じっくりと愚かな案を考えていると、そういう人も欲から離れていき、武士の家に具足金とやら言うように千両であっても二千両であっても、一つの器にまとめて主人と総手代に封印させて子孫が困らないようにして伝え、もし後の代になって大変な目に遭ったとき、親類や総手代が立ち合いのものとで相談した上で、これの封印を切りなさい。そうでなければ簡単に切ってはならないときちんと伝えれば、長期の計画でこれ以上のものはないのです。さあどうでしょうか。」

「いまだに近々がもたらす禍の理屈を、まだ理解されていないようですね。このような考えが出て来るのですから。金銀というものは日々交換するからこそ、万民の宝として大事にされるのです。商売しないで働かないときは、石や瓦と同然で何のいいことはございませんよ。だから、町民が余分な金銀を蓄えておけば、庶民が手に入れられなければ必ず禍があるでしょう。その言われを例えて説明しましょう。水というものは、人の生活に役に立ち一日であっても欠かせないものである一方で、水があふれると被害は酷いものです。それは何故かというと、水は昼夜流れ続けるものであって、本来は滞留するものではありません。ですから、天下の万物を潤して、様々な人が海を渡る道となって、利益を得るのは限りがありません。医学書にも流れる水は腐らないと書いてあって、どんな大きな河も留まることはありませんので、湿気でジメジメすることもありません。もし、水が一か所にたまって流れなければ、その水付近にあるものは腐ってしまいます。人はその湿気を受けて病気になり、さらに数日水が流れなければ水は逆流して国中が蛇の住処になり人が住めないようになってしまうでしょう。金銀も同じことなのです。千両の金は日々好感されて世の中に流れているときは何千万の人の手に渡り、大いに役立つのです。だから、家に隠しておいて取引に使わないときは、天罰を受けて必ず禍に遭うでしょう。あなたが考えるように、千両の金を封印して子孫が困らないようにしようとすれば、親類や手代たちが欲を起こしてその金を子孫に渡さず自分たちで分けてしまおうと、様々な策略をめぐらし挙句に親しい仲が骨肉の争いになり、酷い場合は身を亡ぼす輩が多いので、深く恐れて慎むべきなのは貪欲の禍なのです。

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選挙が近づいてきましたが、争点を老後の2000万円をどうするかにするというようなところにもっていく政党があるようです。

実にばかばかしいと思いませんか?個人の単位でみれば老後の資金にというところでしょうが、これがインフレになってごらんなさい。あっという間に目減りですよ。むしろ金を使わないことで経済が回らなくなる方が問題なのです。

ヨーロッパの友人の話では、1990年代から始まった東ヨーロッパの体制崩壊で、家を一軒買うためにため込んだ金が2年でドア1枚しか買えない状態までインフレが起きたそうです。そういうことだってあるのです。

ここ20年日本はデフレを起こしていたから、余計にため込んでおく方が有利だという感じなのでしょう。銀行利子は0%でも、値段が下がれば実質利子が付くのと同じですからね。これは不健康なことなんですよ、世界的にみても。

金が国全体として回らなくなるから、税収が減り、年金を納める人が減り、老後が苦しくなる部分があるのです。