一 全ての若い人は、色欲を慎みなさい。
一 全ての悪につづく道は面白い事なので、遊芸などに深入りしないうちに早く止めれば許すことが大切である。
一 若くても、善悪はよく見られるものだので、仮にも悪い友人には親密にならず、出世したものと付き合うようにして、彼らの体験談を聞きなさい。
一 衣服は勿論髪を結い方や履物、流行言葉なども派手にしてはならない。
一 親の財産を早く受け継ごうと心掛け、または世帯を早く持ちたいと心掛けは決してしてはならない。
一 喩え家業は賤しくても、財産はきっちりと管理すること。
一 出世を望むすべての人は、友人を多く付き合ってはならない。どうしようもなく悪の道に深入りしてしまうものだと注意しなさい。
このように書いた箇条を実行する者は、親の代から引き継いだ財産を一層積み上げるのは手本のようになるだろう。
最初からいきましょう。
色事、猛烈な人っているもんです。これは男女関係なく。純然たる恋愛ならまだしも、トロフィーを勝ち取るかのような感覚のひと。これは実に見苦しいです。こういう人は愛想がよくて、優しいのですが、実にだらしない。
若いうちよりも、40歳過ぎてからの方に注意してもらいたいですね。といっても、一種の病気レベルなので自制が効かないようです。
遊芸はお付き合い程度ならいいんじゃないでしょうか。これまでの心学でも、これで飯を食うつもりがないならどっぷり浸かるなという趣旨の事が書いてあったと思います。全く知らないと、これはこれで接待等で困ります。
善悪はなかなか一人で通そうと言っても難しいこともあります。企業の粉飾決算なんかを見れば、ひとりでこれを粉飾だ!と上司に戦いを仕掛けられる人なんていませんよね。ましてや、心学の主旨は責任者の倫理感の養成ですから。いかに倫理観を持った人とお付き合いするかに依存してきます。
年上の人との付き合いは、苦労話を聞くだけではありません。苦労話なんざ、自分が苦労したなんて言いたがるのはろくな事をしてこなかった人が、構って欲しくて適当な事を言うことが多いのです。本当の苦労をした人は、苦労話をしません。楽しかったこととして話をします。そして、仕事8割以上は年上、目上の人から貰います。年上に好かれることは重要な事ですよ。
派手な格好は、時と場合によるでしょう。服装は演出する道具だと思えば、分かりやすいと思います。
親の財産を引き継ぐ云々は、まずは教育を受けてからですね。これは学校での教育ではなく、実体験としての教育です。特に自営業者の場合は、取引先との交渉やらなんやら親のやっていることの良い点悪い点をしっかり見定めてやる方がいいでしょう。
親のやっていることがどうしようもないということもあります。経営が下手くそすぎてどうしようもない、そういうときは自分で会社をはじめて親の会社を買収するくらいの感じでやった方が良いでしょう。親はいつまでも子供が半人前だと思っていますし、自分の正しさを振り回して赤字垂れ流しなんてこともよくあります。
つい合う友人は、確かに少なくなってきます。知り合いは多いですが。倫理的に正しい事、頭の良い人、決して多くはないですから。
そして注意したい事は、自分の愚痴を聞いてくれる人とは付き合わない事です。同じ思考に凝り固まって、どうしようもなくなります。