どんな商売であっても、大きな利幅はとらないようにするべきだ。余計に利幅を取ると繁盛するのは難しい。

 

さて、私が商売をするときに前もって、掛けで商売する[1]ときは損が出ないように考えるべきである。多くは不注意から損失が出るものだ。不注意とは、販売するときその人の財産や日々の考え方はどんな状態なのか、よくよく判断して商売をしなさい。だから、そういった判断もなく適当に掛売をして、払えないとなったら急なことだと驚いて、御上に訴え出るなんていうのは愚かなことである。

 

そうじて、上の人たちのご苦労を考えなさい。こういう事は、下として上を敬う礼であろう。値引きしたり掛売したりすることも商人として行う事であるが、さもしい心があったら中々出世しないものである。普段から邪なことに熱心になり、段取りがうまくいていると思ってみても、だいたい準備はうまく行かないもので、結局は無益なことに手がかかり、上手くはいかないだろう。ならば、善くないことは少しでも考えないようにすべきである。さて、商いが得意な人は更にお得意さんを大事にしなさい。その商いのおかげで妻や子供、親戚までも養うことができるので、給料を支払う主君と同じである。そういったことを大切にすれば、売掛金を回収しそこなう事はない。みな理解すべきことだ。

 


[1] ツケで売り買いする。

 

 

ここは実に日本的な発想です。良いものは高い値段になるのが常識ですが、日本ではそれを安く提供しなさいとしているのです。

 

例えば、日本製のスポーツカーとヨーロッパ製では値段が3倍以上違います。性能はほとんど変わりません。にもかかわらず、安く売らなければならないという強迫神経症にも似た値段の下げ方でした。ここ10年ぐらいは日本企業も値段を上げる努力をしていますが、それでもまだ諸外国から見れば???と思う様な値段の付け方をしているのです。

 

逆ぶれすると、今度は値下げ競争になります。本当は値引きしてはいけないようなものまでやってしまうので、失われた20年、デフレスパイラルになってしまったのかもしれません。

 

今では、「値段を下げよ」ではなく「欲張ってボッタクリはするな」、タイミングを見計らって在庫一掃しなさいぐらいでしょうか。