水仙の花の蕾がいつ開いてもおかしくないようになっていたのですが、昨日そちらが咲き始めておりました。別な日あたりのところはもうとっくに開いていたのですが、不思議なものです。
何本か切ってコップに挿しました。
その香りが漂います。
独特な香りで、甘い花の香りではありません。
でも水仙が咲くたびに、この歌を思い出すのです。
中田喜直の歌曲に「水仙」を歌った歌曲があったのです。
題名は〈清しきうなじ〉という歌曲です。
三好達治の詩でした。
〜すずしきうなじうなだれて、咲く日といへどおのずから 香はかおるなれ水仙花、とおとき人のひとりいて〜
水仙の香りを意識すると、反射的にこの詩が浮かびます。
しかし、春のはじめに咲く花のエネルギーを感じる香りですが、花の香りとしてはちょっと厳しい香りかもしれません。
春の季節感を感じるその姿は、可憐な佇まいですが。
復讐の神ネメシスにより、ナルキッソスが自分に見惚れてしまって、自分自身に恋をしてしまうのです。じっと水辺に座っていて、水仙の花になってしまったというお話なのですが、水仙の花言葉に「自惚れ」という言葉があるのはそこからきているようです。
冬の寒さの中で一生懸命に花をつけ、挙句の果ての言葉がこれではちょっとかわいそうにも思います。
そういえば、先日のコンサートで彌勒忠史さんの書かれた本を一冊買いました。『歌うギリシャ神話』です。オペラ・歌曲がもっと楽しくなる教養講座 とのこと。
ヨーロッパの音楽には、ギリシャ神話の神々やそのエピソードもよく散りばめられております。
その主なよく取り上げられるお名前の方々のお話が1人ずつわかりやすく書かれていているのです。色々な美術作品にも戯曲にも取り上げられている有名な方々です。
実はこの本も楽器店の書棚にあるのは承知していたのですが、今までなぜかご縁がなかったのです。
プレトークの時にヘンデルがあの長大な《メサイア》をたったの24日で書き上げたのだというお話の時に、自分が本を書く時に短くても半年はかかるのだというお話が出てきていました。
そういえばこの方のご本を読んだことがないなあ………
(実はこの方のご紹介の欄に『イタリア貴族養成講座』というご本の紹介があって、これはちょっと読みたいなと思っていたのですが、こちらの本は売っていなかったのです………)
このオペラ宅配便シリーズの2009年には、パーセルの《ダイドーとイニーアス》を上演していたのですね。残念!(その頃は最も忙しい日々を過ごしていたように思います。あまりコンサートへも行く時間的な余裕がなかったように思いますが………)
2020年の 能《隅田川》×ブリテンオペラ《カリュー・リヴァー》、昨年の《シッラ》は拝見いたしましたが。
しかし今回、解説をしながら歌も歌われ、しかもその演奏がしっかりとしたものであったことにただただ感心したのです。
残念ながらこちらの本には ナルシス 、(ナルキッソス)は登場いたしません。
この強さを持った水仙の主人公の音楽にも出会ってみたいものです。
絵画ではお目にかかっていると思うのですが。
自分が見惚れるぐらいの美しさですから、もちろんとても美しい方なのでしょうが………
今日も良いお天気なので蕾の水仙が一気に咲いてしまいそうです。