「海が見える家」「海が見える家  それから」とよく似た表紙の絵ですが、少し微妙に違っています。話を読むとどうしてその表紙がちょっと違っているのかがわかるのです。

はらだみずきさんという方が書かれた本です。

この方のご本は今まで読んだことがありませんし、内容の説明も読まず、どちらかといえば、そのよく似た表紙の絵に惹かれたと申しますか、こういう感じの表紙の本はあまり深刻な内容ではないだろうと思ったのです、

 

夏らしく、最初の本はひまわりが咲いているのですが、「それから」という続編の方は、マリーゴールドとトマトが前景に描かれていて、この話の中心になっているオレンジ色に塗り替えた家が、前作よりも大きくしっかりと描かれているのです。

 

前作の絵にも人が描かれていますが、なんとなく、男女の兄弟のような感じの2人が砂浜に座って海を見ているのです。

 

続編に書かれている人は、クワのようなものを持ってしっかりと海を見ながら立っていて、大きさも前作より大きく描かれているのです。

存在感を増したような印象です。

 

この絵は微妙に本の内容に基づいて描かれているのですが、この本を2冊購入しようと思ったのは、やはりこの絵のせいです。

 

しかも青い空、青い海の全体的な色合いは似ているのですが、微妙に続編の青い色の方が濃い色のように思うのです。

まるで、主人公のここでの生活に対する気持ちの色合い、気持ちの強さの変化を表しているようなのです。

絵に惹かれて購入したのですが、買うときはそんなことまで感じて買ったわけではないのです。

後からもう一度見直してみればそういうことだったのね……ということが理解できるといったものです。

 

あまり暑いし、文庫本は基本持ち歩いて、電車の行き帰りや、何かを待つ時に読むので内容的に難しくなってしまうと読み続けられなくなるので、「気軽に読めてふっと力が抜けるものが良いなあ」と思っていたので、正直なところこの絵の本なら夏向きの話が読めるのではと思ったのです。

 

少しづつ読んでいたのですが、あまりまとまって時間がなく、先日の伊豆長岡温泉で他の方をお待ちするときにエアコンが効いた、お風呂の涼み場のようなところで、ちょっとまとめて読めたのです。

そのすぐあとに海岸をドライブして、この話は房総の海の話のようなのですが、スエットスーツの話や、海の描写などが出てくると、今読んだばかりの話の風景と重なったりしていました。

 

話としてはそんなに起伏がある複雑な話ではありませんし、出てくる方が、皆、根が善良な方ばかりなので、安心して読み進められるのです。

 

海のことばかりではなく、野菜の手作りの部分の話で、有機農法と自然農法の違いなどが出てくるのですが、そこでなぜ、続編の表紙にマリーゴールドが描かれているかがわかるのです。マリーゴールドの隣にはトマトが鈴なりになっているのです。

漠然と自然農法という話は聞いたことはありましたが、はっきり言って有機農法との区別がついていませんでした。

 

「北の国から」の中に無農薬、有機農法の畑から、害虫や病気が広まっていると言って、周りの迷惑をちっとも考えていないといって、普通に農薬や肥料を入れる農業やっている方が批判している場面が出てきましたが、難しい問題だろうなと、その時思いました。

 

今回は農業の話ではありませんが、自然農法というものが出てきて、マリーゴールドがなぜ畑に一緒に植えられているかということが書かれておりました。それが表紙に書かれているマリーゴールドにつながっていることに読み終わってから初めて気がつきました。

 

もちろん都会でのサラリーマン生活から ワイプアウト した主人公が、その房総の海の見える家で新しい生活を獲得していく過程を書いているのですが、海の匂いと共に主人公の素直にものを感じ取る感覚が、この話を読む者にあまり抵抗を与えないように思います。

 

この「ワイプアウト」という言葉もサーフィンの用語として使われているのだということを初めて知りましたが………

この暑い夏に、楽しんで読むことができました。