めくるめく毎日。

あっという間に日が変わり、

3月9日。

誕生日の翌日。


空手の昇段試験が行われた。



半期に一度のチャンス。

連敗を喫してからアイツは変わった。


勝負の日を迎えたアイツは
必ず黙る。


いつもの玄関掃除。
いつも以上に余念がない。


結果じゃない。
過程が全てだ。
と見守る外野の気持ちとは裏腹に


試験に臨む当事者は
段位にこだわる。

帯の色を意識する。


アイツは先生の指導を仰ぐため、
先生が少年団を展開する
別の小学校にも馳せた。





最近のアイツは少年団が始まるのを待たずに
一人練習を重ねていた。


家では
いつも無意識に体を動かしていた。




静寂の中、演舞が始まる。

前の試験で帯の色は変わったばかり。
頓着の無い母には
それで、紫帯で、十分だった。




『押忍!!』


アイツはこれまでになく
声が出ていた。


今までとは比べものにならないくらい
動きにキレがあった。


小学4年生も終盤。
半成人式で
その大きな成長を感じたばかりの
アタシの心に

また新な感情をもたらした。


『こんなにたくましくなったとは…。』





空手を始めたきっかけ。
それは克己。弱さからの卒業。

アイツは強さに憧れていた。

暗闇を恐れるアイツは
とにかく強くなりたかった。



今では
父が留守の間はオイラが家族を守ると
息巻くまでになった。




合格発表。

アイツの名が呼ばれた。


『岡本、参級昇段。』





五級からの飛び級だった。

アイツは凛と前を見据えていた。


帯の色が紫から茶色に変わる。

初段黒帯まで、あと二つ。


夢だった黒帯が、
目標に変わった。






『来年の主将を発表する!』

年度末。
昇段試験の最後に必ず発表される
次期主将。


『岡本。』

『押忍。』


小さな小さな少年団。

それでもきっと頭になるということは
景色も変わるし、意識も変わる。


試験前、昇段試験を前に
内示されていた主将という言葉。


その肩書きに負けない結果をと、
アイツなりに必死だったかもしれない。





お年玉で買ったヌンチャク。

今のアイツの宝物であり、相棒でもある。


『タイ兄ちゃん、カッコよかったー!』


弟達に囲まれたアイツは
嬉しそうにはにかんでいた。






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