〈社説〉 2024・2・26 タイムパフォーマンス2024年2月26日

緩急自在な躍動のリズムを

 「タイパ(タイムパフォーマンス)」は、2022年、三省堂の「今年の新語」で大賞に選ばれた言葉で、Z世代(1990年代中盤以降に生まれた若者たち)のトレンドとして注目を集め、最近では広くビジネスの世界で聞かれるようになった。「効率性」が重要で、それを追求することが美徳とされる今の時代を象徴している。長時間を費やしても満足度や効果が低いと「タイパが悪い(低い)」となる。
  
 好きな映画やテレビドラマを数多く見たいという理由から「ながら視聴」や「動画の倍速視聴」「10秒スキップ」をするといった、タイパを上げることで自身の満足度を高める人は増えている。一方、自分にとって心地よいことなどに時間を費やすために、それ以外の時間は短縮しようとタイパを意識する人も多いのではないだろうか。
  
 日本インフォメーションが行った調査によると、日々の生活の中でタイパを「意識している」人は全体の4割弱。その中でタイパで効果を得られていると感じているのは「乾燥機能付き洗濯機」「食器洗い乾燥機」「冷凍食品・ミールキットなどの利用」で家事関連の項目が上位を占めた。また、世代に関係なく約半数の人が「日々の生活で時間に追われる感覚がある」と答えており、多忙な現代人はタイパを意識せざるを得ないことを裏付けた結果になった。
  
 エッセイストの三宮麻由子さんは本紙のインタビューで、自身の生活の中で「速く効率的に情報を取り入れることが必要な時」もあるとした上で、「じっくりとした時間も大切にしています」と語っている。速さを求めた時間軸しか持てないと“時間を自分でコントロールしているようで、実は時間にコントロールされてしまう”と懸念していた。
  
 スピード重視か、じっくり向き合うか。事に応じて選び取る“選球眼”が求められる。池田先生は、激しいスケジュールの中で「動」と「静」の緩急自在な躍動のリズムを体得することが「日々活力を増していった一つの源泉」であったとつづる。
  
 うるう年の今年は、2月が29日まである。英語ではうるう日を「leap day(飛び越える日)」と呼ぶ。その貴重な1日を含めて、価値ある“跳躍”の2月としていきたい。