新聞記者 (映画)   2019年 | 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

日々接した情報の保管場所として・・・・基本ネタバレです(陳謝)

監督 藤井道人
脚本 詩森ろば、藤井道人
原案 望月衣塑子

 

キャスト
東都新聞
吉岡エリカ              :シム・ウンギョン
陣野和正(エリカの上司)   :北村有起哉
倉持大輔(同僚)          :岡山天音
関戸保(同僚)            :郭智博

 

内閣情報調査室
杉原拓海                      :松坂桃李
多田智也(杉原の上司)    :田中哲司
河合真人(杉原の同僚)    :長田成哉

 

内閣府職員
神崎俊尚                        :高橋和也
都築亮一(神崎の後任)       :高橋努

 

その他

神崎伸子(神崎俊尚の妻)   :西田尚美
神崎千佳(神崎俊尚の娘)   :宮野陽名
杉原奈津美(杉原拓海の妻) :本田翼

 

 

 

感想
全くの予備知識なく、松坂桃李がどちら側かの認識もあまりないまま観に行った。
この参院選を行おうという時期に、勇気があるなァとは思うが「大統領の陰謀」などの様なジャーナリズム映画か?となるとちょっと疑問。
ウィキペディア で是枝監督が言っている様に「保身を越えて持つべき矜持について」の映画だと考える。
観る価値がない、とは言わない。観るべきだろう。現政権がグダグダだという事を選挙前に思い出すという効果。今のところはそれでいい。

 

基本的構成は、原案を提供した望月衣塑子氏が経験した取材をベースにして組み立てられている。
首相御用記者のレイプ事件は、ほとんど実話。詳細はコチラ。

ただ物語の中では「こんな話がある」という程度で、糾弾しようというまでの表現はない。

 

今回メインテーマの大学設立は、加計学園の獣医学部新設ネタがベース。文科省が特区による新設を認めなかったのに対し、閣議決定で獣医学部新設を募集。他大学の申請が不利になる法改正を行った上で加計学園に認許。理事長と首相との「お友達」関係も騒がれた。
こういう形で政治の不正に切り込む姿勢は素晴らしい。また勇気が要ることでもある。
ただし構築がイマイチ(相当)中途半端な感あり。

 

実際、今回条件に合致するバイオセーフティレベル4の、大学施設の新設が長崎大で着工されている(記事はコチラ)。
この様な状況で、大学許認可を巡って関係者が自殺するという構成を作るのには、相当なアイデアが必要。神崎はあくまでも外務省からの出向職員であり、今回の様な危険な書類の決済を行う権限などある筈がない。

 

また、危機の認識に関わる「ダグウェイ羊事件」については、結局大量死に関して神経ガス漏洩の疑いから、時のニクソン政権で化学兵器運用が大幅に縮小されたという経緯があり、政府が目指すものではない。

こうして眺めてみると、目新しくてキャッチーな言葉が使える事象を適当に組み合わせて大きく見せる、TVドラマ的な薄っぺらさを感じてしまう。予告編の「現政権がひっくり返るかもしれない」の言葉はほとんど詐欺。

 

また、記事作りに対してほとんど杉原の情報に依存している。

報道側としての姿勢が全くもって信じられない。
最初の新潟特区が頓挫した後、次の動きがあると教えてくれた同僚の倉持。これこそが記者としての動き。なんでこれを生かさないのか。
大統領の陰謀」では、情報提供者の「ディープスロート」が重要なキーマンだったが、彼はあくまでも示唆を与えるだけ。全て記者たちが足で膨大な証拠を集めて行った。そして彼らにギリギリまで確証を求める、チーフのブラッドリー主幹。
それと比べると、今回の陣野チーフも甘すぎる。言うだけ言って「忠告はしたぞ」ってなによ。
内調から脅迫があったら、何がなんでも情報提供者を守らなくちゃならんだろう。もし実名出したら、杉原の不法侵入と機密文書持ち出しで、彼の人生は終わり。
もうちょっと監修能力のある新聞OBとか使うべきだった。

 

彼の実名出して次の記事書くって、エリカちゃんそらーないよ。

ウィキペディアを読むと、作った藤井監督は新聞も読まない様なタイプで、オファーを二回も断ったとある。これでは詰めが甘いのも当然か。

 

原案者の望月衣塑子氏は、現在中日新聞東京本社の人間。

前述の事件を追って多く取材している。

確かにジャーナリストとしての矜持に溢れている感はあるが「権力と戦う」という姿勢に多少偏りがあるという批評もある。また、本人役で出演もしていたらしい(話題作りにしてもこの辺がミーハーやなぁ)

やはり新聞ネタ、記者モノは多少地味であっても「真実」を扱うべきだろう。


オマケ
1.杉原に娘が生まれて退院する時「なんや、あの髪フサフサ」。早産で生まれたんだから、もっと小さくて毛の少ない赤ん坊にしとけよ・・・
2.ラストシーンで杉原がつぶやいたのは「ゴメン」だろう。妻との会話でも伏線でさんざん「ゴメン」と言い続けていた。

赤信号を見せて、あのラスト。車に飛び込んだのかも、という想像もあるが、基本はエリカを裏切ったのだろう。
親子二代で誤報のそしりを受けて、厳しい未来が待っている・・・・・
3.田中哲司は小悪党やらせるとウマいなぁ。

 

しかし、日本でこういう映画の結末がいつもバッドエンドになってしまうのはどーして?
どーせ作るなら、全部うまく行ってホントに政権転覆!なんてやってくれれば大ヒットにもなるだろうし。

 

 


あらすじ

自室でTVの政治討論を見る女。テーマは日本メディアの現状について。メディアの存在そのものが問われている。
この時代に十分戦う体制が出来ていない。権力をどうチェックするか、記者が問い続けなくちゃいけない・・・

 

東都新聞に出社する吉岡エリカ。社では白岩議員が女代議士とデートした事件でもちきり。各社で出された記事は全て同じ段組み。
ツイートをチェックする吉岡。「犯罪者は殺せ!」等々の過激表現。

 

内閣情報調査室(内調)で働く杉原拓海。同僚から「こういう仕事増えましたね」と言われる。犯罪者でもないのに公安が尾行してスキャンダルを作る。マスコミの情報操作に対する対抗措置だ、と室長の多田を擁護する声。

 

吉岡は、チーフの陣野から分厚いコピーを渡される。新設の大学院大学の申請に関するリーク文書のFAX。新潟特区。目的はウィルス研究と最先端医療に特化。だが認可先が内閣府になっている。普通大学を作るのは文科省。
民間企業に委託、との記述。どうせ総理のお友達企業とかじゃないか、と茶々の声。発信元も判らないが、コピーのトップに目を黒く塗りつぶした羊の絵。。
「ひょっとしたら政権がひっくり返るかも知れないな」とまた茶々を入れる者。

 

室長の多田に呼ばれる杉原。白岩の件、よくやったとのねぎらい。
杉原は外務省からの出向。

最近誰かと連絡取ったか?と聞かれ否定。

自宅に帰る杉原。妻の奈津美は妊娠後期。検診につき合ってもらいたい妻だが、応えられない。

 

また政府周辺の事件。総理ベッタリの御用記者、藤川のレイプ事件が不起訴になった。
多田に呼ばれる杉原。例の件の被害者が不起訴を不服として、顔出しで会見する。この事件が野党絡みだというチャート図を作れ。

藤川はハメられた。彼女はハニートラップ。
「彼女民間人ですよ」と反論する杉原だが「繋がっているという事実さえ作ればいいんだ」と多田。

 

杉原に電話。北京の日本大使館で上司だった神崎から。

一緒に飲む約束をする杉原。

 

社で陣野に食い付く吉岡。自分が書いた例のレイプ事件の会見が、写真もなしのベタ記事。警察が一旦不起訴にしてるからムリ。「それよりも羊の件はどうなった?」と催促する陣野。
レイプ被害者に対する攻撃ツイートが凄まじい。内調がネットカフェ難民使ってやらせているという噂。
被害者擁護のツイートを実名で載せる吉岡。ヘンなやつ、と訝る同僚。

 

多田が週刊誌のゲラ記事を持って室にネジ込む。

何でチャート図が週刊誌に流れたんだ!
記事には「内調が印象操作。被害者女性のチャート図拡散」の見出し。杉原は、多田に指名された協力者にチャート図を送っただけ・・・・

 

神崎と飲む杉原。

5年前、神崎が責任を取って辞めた時の事を話す杉原。
実は、責任を取ったら今後も面倒見てやると言われた。国と家族を守るためと自分に言い聞かせた。
ベロベロになった神崎を自宅に届ける杉原。妻の伸子が何か聞こうとしたが、口を濁す。

 

政府関係者にコンタクトする吉岡。その医療系大学は目的が判らないので文科省として断った。内閣府はいろんな官庁からの寄せ集めで、ほとんどプロパーがいない。
「これをリークした人がいるとしたら?」 「内閣府に出向している人間の可能性はありますね」

 

TVの対談番組。
内閣府の真ん中には官邸がある。内閣情報調査室ってのは総理直結。そこで何が行われているかは誰も判らない。
あの暴行事件だって、なぜ捕まらなかったのか不思議。警察も検察も、その政治権力にかなり支配されている・・・・

 

食堂で外務省時代の先輩都築に会う杉原。最近仕事を変わったという話を聞くと「例のアレだよ」
内閣府の大学の件。神崎さんの後任になった。今申請書でバタバタしている。 「何の話でしょう?」
神崎さんマークしてたのお前たち内調だろ?と言いかけて「今の話、なかった事にしてくれ」と立ち去る都築。

 

内閣府への出向者という事で、都築に取材アタックをかける吉岡。大学特区の担当ではあるが、これからおいおい把握すると言った「前任者に聞いた方がいいんじゃないですか」
そこで吉岡が神崎の部署に電話を入れるが、療養中で休みだという。

 

神崎電話を入れる杉原。だが出ない

。神崎の家まで行くが誰もいない。
何度目かの電話で神崎が出る。「俺たち、一体何を守って来たんだろうな・・・・」ビルから飛び降りる神崎。そして神崎自殺の報道。

 

多田にネジ込む杉原。「知っていますよね」
お前の元上司だってな、と多田。知ってるのは、最後の通話者がお前だって事ぐらいだ。
神崎さんは簡単に死ぬ人じゃないと悔しがる杉原に「お前、子供が生まれるそうじゃないか」
神崎に関するネガティブ情報が、室を挙げて発信される。

 

神崎家の通夜への取材を指示される吉岡。
通夜の後、妻と娘を庇いながら歩く杉原たちに報道陣が群がる。

かつて父の葬儀の時、同様にされた記憶が戻り、思わず記者を制止する吉岡。車で去る妻と娘。
エリカと二人になる杉原。「君もあっち側の人間だよな。どうして?」
それには答えず「私は神崎さんが亡くなった本当の理由が知りたい」と訴えるが「君には関係のない事だ」

 

妻からの連絡を全て切っていた杉原は、LINEを見て病院に駆け付ける。家で破水して、厳しい状況だったから帝王切開で出産させたという医師の話。まだ眠っている妻。

 

都築に会う杉原。

自分は蚊帳の外だったと言うが、取り合わない都築。
三年前の話。外務省内でマスコミに出してはまずい文書を改ざんした。神崎は上の指示でやった仕事だったが、全ての責任を被った。

彼は外交官としてのキャリアを人質に取られており、身動きが取れなかった。
答えない都築に「どうして神崎さんが死ななければならなかったのか」と迫る杉原に「内調だ、自分で調べろ」

 

東都新聞で、週刊誌のゲラを持って皆を呼ぶ陣野。

「先越された」 見出しは「新大学プロジェクト頓挫」
頓挫ってことは、もう追うなってことだ、と陣野。
反発する吉岡に、これ以上この事件を追ったらリスクが大きすぎる、と陣野。羊は神崎さんかもしれない、と吉岡。

神崎さんが死んだ理由はこれだけじゃないかも知れない・・・
「いいか、忠告はしたぞ」と陣野。

 

神崎の家へ行き、力になれなかった事を伸子に詫びる杉原。

 

街頭で政府批判をするデモ。「責任取れよ、ホントの事言え・・・・」多田がその写真コピーの顔に印を打って、これを公安へ送れと指示。民間人なのに、と反発する杉原に「全員犯罪者予備軍だ」

 

街頭インタビューをしている吉岡。そこを通りかかる杉原を見つける。初めて杉原が内閣府で働く者だと知る。
新設の大学に関する文書を入手した件を話し、神崎の関与を仄めかす。

TVで、神崎の自殺についての討論が行われている。無責任な評論。

 

出社する吉岡に同僚の倉持が声をかける。

羊の件、新潟じゃなくなったというのは事実。実は他社も動いてると聞いた。まだ終わっていない。
プロジェクトが頓挫していないとすれば、また国家戦略特区に作るかも、と言ってピックアップしたリストを見せる倉持。場所を変えて仕切り直し・・・

 

杉原を尾行する吉岡。だがその彼女に電話。出ると杉原の声。「周りに誰もいないか確認して下さい。マークされている可能性がある」
「大丈夫です」杉原が振り返る。顔を合わせる二人。


話し合う二人。神崎との関係を話す杉原。大学設立に関するPJに関わっていた。おそらく情報漏洩があり、それで内調からマークされていた。だが自分はそこから外されていた。
彼は大学の計画を止めたかった。

だがそんな事で自殺する様な人じゃない。
エリカも自分の父の話を始める。父も新聞記者だった。

誤報を出した事で責任を負わされ自殺した。
父はそんなに弱い人じゃない。そう思っても真相は判らない。
だからどうしても、知りたいんです。記者として真実を伝えたいと訴える吉岡。

大学の計画はまだ終わっていない、と話す杉原。別の場所での申請。恐らく神崎さんはまだ情報を残している。このまま行くと来月には申請されてしまう。

 

社で陣野に話す吉岡。大学が出来るのは間違いなさそう。
トップに圧力がかかっていると話す陣野。お前の持っているネタはガセだから、出したら誤報になる。
でも他社も動いてる、と倉持。「必ずウラを取ります」と吉岡。

 

多田に呼ばれる杉原。吉岡との面識を問われ肯定する。
エリカの父親に関する情報。大手都銀が当時首相に不正融資しているという記事をスッパ抜いた。だが政府が銀行を締め付けて引っ込みがつかなくなって自殺したんだろう。
火消しは大変だった、と話す多田。それが俺たちの任務だ。安定した政権を維持させる事が、この国の平和と安全に繋がる。出産祝いを渡され、半ば放心して受け取る杉原。

 

一方陣野の話。圧力には吉岡の家族歴暴露も含む。お前の素性は判っている、父親の二の舞いになりたいのか、という脅しだ。

 

神崎宅を訪れた吉岡は、インターホンを切ろうとする伸子に、羊の絵をカメラに向ける。
神崎の位牌に手を合わせる吉岡に書斎机のカギを見せる伸子。
送られた資料の話をして、その羊の絵を改めて見せる吉岡に、一冊のスケッチブックを見せる伸子。娘が小さい頃神崎が描いてやった絵にそっくり。目の部分を塗りつぶしたのが今回のもの。
書斎机の鍵を渡され、吉岡が中を確認すると、羊の絵のコピー。その下に次なる大学の資料が。

 

エリカに呼ばれて神崎の家に来た杉原。
資料と共にあった洋書を見せる吉岡。

 

それは「Dugway sheep incident」。
ダグウェイは、アメリカの有名な生物兵器実験場。1968年に実験場で起きた羊の大量死を描いたノンフィクション。その時に扱われていた神経ガスが原因とも言われている。
「政府は日本のダグウェイを作ろうとしていると?」新設しようとしていた大学は、生物兵器の製造も行える施設を持っている大学。だから神崎さんは許せなかった・・・・
「でもこれだけでは記事は書けません」
「大学設立の真の目的は、医療ではなく軍事だという明確な証拠・・・」
協力してもらえないかと言う吉岡に、自分は国側の人間だとけん制する杉原。このままでいいんですか?と言う吉岡。 「・・お願いします」

 

都築さんと打合せの予定だと言って事務所に入り込む杉原。
部屋で待たせてもらうと言って、都築の部屋に入り、ネタを探す。
出庁前の都築にインタビューを仕掛けて足止めする吉岡。取り合わない都築に、大学設立の目的は軍事利用?と過激な言葉を浴びせる。だが引き止めも限界。
部屋で次なる大学の申請書ファイルを見つけ、スマホで撮って行く杉原。書類には都築の印が。
都築が部屋を開けた時、誰もいなかった。

 

陣野に杉原を紹介する吉岡。神崎の資料を補強する、先のスマホデータを交えて説明。
例の大学の正体。バイオセーフティレベル4の研究施設が併設される。表向きは平和利用だが、テロの外圧に対抗するために、軍事利用可能な研究も可。要は生物兵器になり得る病原菌を研究する目的で、大学の名前で施設を作ろうとしている。
だがそこへ陣野に電話。
これを出したら誤報になるらしい。「内調ですか?」の問いに、言わないが、情報がここにあるのを知っている者は他にいない。
諦めるんですか?と詰め寄る吉岡。
誤報と言われた時に跳ね返す手段がない、と言う陣野に杉原が「その時は僕の実名を出して下さい」
そんなのダメです、と言う吉岡に

「君なら自分の父親にどっちを選択して欲しい?」
「わかりました。有難うございます。絶対ムダにしません」

 

スクープの準備が進む。ゲラのチェック、説明の甘い部分の補強。


そして新聞が発行された。「新設大学でテロバイオ研究?」の見出し。

 

妻、子供を連れて退院する杉原。忙しくて放置していたポストから、神崎の手紙が落ちる。

新設の大学を運営する民間企業は、首相の旧くからの友人の会社。その会社に大量の資金が流れた。これは各省、内閣府が捻出した国民の税金。そこに私の決済印が押されている。
私はまたも全てを被った。またこんな風に生きていくしかないのか。もうそれは耐えられそうにない。許してくれ、すまない。

 

陣野に呼ばれる吉岡。悪いニュースだと言う。週刊誌のゲラ。
君や上司のために官僚が暴走した。

要は誤報だと言いたいらしい。吉岡の父親の事も書いてある。
いいニュースもある。朝日、毎日等各社が続々とウチの報道を書いている。どちらにせよ、この先はイバラの道、どうする?と聞く陣野。
続報で杉原の実名を出すと言う吉岡。

 

吉岡に電話。多田からだが吉岡は彼を知らない。
記事が良く書けている事を褒める。「お父さまそっくりだ」
そして「あなたのお父さん、誤報じゃなかったんですよ」
「でも、死んでしまった・・・・残念でしたね」
切られようとする時、吉岡が言う

「あ、あの。わざわざ有難うございました・・・」

 

多田に呼ばれる杉原。「お前じゃないよな。お前のわけがない」
外務省に戻って、しばらく外国に駐在すれば、みんなお前の事を忘れる・・・・ ただし条件がある。今持っている情報は全て忘れろ。
杉原が退室する前に、多田の言葉。
「この国の民主主義は、形だけでいいんだ」

 

杉原の勤務先に向かって走る吉岡。
道路の先に、フラフラと歩く杉原の姿を見つける。
声をかけると杉原が顔を上げる。信号が赤に変わる。
声にはならず、三つの言葉を発する杉原。